労働安全衛生研究
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原著論文
建設業における中小企業の安全意識向上に資する労働災害損失額の計測手法の構築に関する研究
高木 元也嘉納 成男
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2008 年 1 巻 1 号 p. 9-16

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抄録

重要な政策課題である中小建設会社の安全活動の促進には企業経営者の安全意識の向上が不可欠であり,このためには労働災害損失が企業に及ぼす影響の大きさを示すことが有効である.本研究は企業レベルでみた建設現場で発生した労働災害に伴う損失額の計測手法の構築を試みた.国内外の既往文献調査,総合建設会社ヒアリング調査等に基づき,建設業の特性を踏まえた建設現場の労働災害損失項目,損失額算定方法等を設定し,これら損失項目の妥当性の検証等を目的に労働災害損失事例調査を実施した.さらに,建設会社を対象としたアンケート調査を実施し損失項目等の2次的な検証を行った.この結果,仮定した損失項目等は実務者の経験や感覚に照らしても概ね妥当なものであるとの結果が得られた.また,アンケート調査結果からは,多くの企業が労働災害損失額を計測し活用することは必要と考えるが,現状ではその手段も少なく,十分に実行されていない実態が把握でき,実用的な労働災害損失額計測システムを開発することの重要性が確認できた.労働災害損失事例調査からは,労働災害に伴って直接的な損失額は少額な場合であっても,企業は目に見えない多額の間接的な損害を被っていることが明らかとなり,潜在的な労働災害損失を把握するため間接的な損失まで計測対象を広げた本計測手法の重要性が認識できた.

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© 2008 独立行政法人 労働安全衛生総合研究所
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