抄録
近年熱中症が多発していることから,作業現場における暑熱環境リスクの指標としてWBGT値の測定・評価が求められている.その一方で現在さまざまなWBGT測定器が市販されているが,それらの測定器がどの程度適切かつ正確に本来のWBGT値を測定・評価しているかどうかは必ずしも明らかではない.そこで本研究は,その点を明らかにするために,複数の市販WBGT測定器を用いて屋外環境(曇天コンクリート上,晴天コンクリート上,晴天ステンレス板上)で並行測定を行い,機種間の測定値の比較ならびに自然湿球型の標準機種との比較を行った.その結果,黒球を持たない簡易型測定器では晴天時あるいは照り返しの強い晴天時で黒球付きの機種に比べて2~4℃程度の差があることがわかった.従って,黒球のない簡易型は日射のある屋外では誤差が大きくなることに注意が必要である.また,温度・湿度から簡易的にWBGT値を求める簡易換算表についても,日照のある屋外では平均で3~4℃程度過小評価することが示されたことから,誤差が大きくなることに留意が必要である.