労働安全衛生研究
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情報通信業のシステムエンジニアとプログラマーにおける過労死等の労災認定事案の特徴
菅知 絵美 吉川 徹梅崎 重夫佐々木 毅山内 貴史高橋 正也
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論文ID: JOSH-2020-0002-GE

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抄録

ITの技術革命によりシステムエンジニア(SEs)やプログラマー(PGs)の労働環境は急速に変化し,彼らの過重労働と健康問題が懸念されている中,IT産業が「過労死等防止のための対策に関する大綱」において過労死等の多発が指摘される5つの業種・職種の1つに挙げられた.本研究では,SEs及びPGsを中心とした情報通信業の過労死等の労災認定事案の実態や特徴を明らかにし,過労死等の予防・対策の手がかりを得ることを目的とした.2010年から2015年に過労死等で労災認定された情報通信業の事案を対象に脳・心臓疾患51件と精神障害85件を抽出した.その結果,SEs及びPGsにおいて,脳・心臓疾患事案では50歳未満の事案が9割を超え,心臓疾患の死亡事案が9割を占めていた.精神障害事案では50歳未満の事案が約3/4を占め,うつ病エピソードの事案が3/4以上であり,死亡(自殺)の事案が3割を超えた.また,脳・心臓疾患の多くの事案で時間外労働時間は発症前3か月から80時間以上を超え,発症前2か月にかけて増加する傾向が見られた.精神障害事案において心理的負荷が生じた出来事のうち特別な出来事では「極度の長時間労働」や「恒常的な長時間労働」の割合が高く,具体的出来事では「対人関係」及び「役割・地位の変化等」の割合が生存よりも死亡事案で高くなっていた.SEs及びPGsにおいて若年齢層から中年齢層に対し適正な勤務時間管理の実施や業務内容の効率化を図り,長時間労働による負荷を軽減することが過労死等の防止対策に必要であることが示唆された.

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© 2020 独立行政法人 労働安全衛生総合研究所
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