論文ID: JOSH-2020-0004-GE
我が国で,振動障害はチェーンソーによる白ろう病が広く認知されているが,使用時間の制限や機械の低振動化によりそれらは減少傾向にある.一方,製造業を中心にグラインダーなどの振動工具を取扱う作業者は100万人を超えると推定されるが,振動業務健康診断の受診者は約63000人程度にとどまっている.近年,レーザースペックルフローグラフィー(LSFG)を用いた皮膚血流測定の適応可能性が示されたことから,我々はその客観性や簡便性に優れた特徴から振動ばく露による末梢血流変化の早期検出が可能であると考えた.そこで,振動工具取扱い者の作業歴,作業頻度から振動ばく露の累積値(累積振動ばく露量)を用いて末梢血流と累積振動ばく露量との関連を明らかにすること,振動障害の早期検出にLSFGを用いた冷水浸漬検査の有用性を明らかにすることを目的とした.その結果,末梢血流と累積振動ばく露量には明らかな関連を認めなかったが,LSFGの客観性,再現性は振動業務健康診断においてもその利点を活用出来る可能性がある.しかし,実際の活用にはさらなる調査が必要である.