労働安全衛生研究
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労働者が職場において疎外感や差別を感じる要因に関する実態調査
-教育機関における労働環境改善の視点から-
保科 寧子 鈴木 幸子渋谷 えり子内山 真理須永 康代辻本 健森 元二髙木 薫
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論文ID: JOSH-2022-0031-CHO

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抄録

本研究では,職場において疎外感や差別されたというネガティブな体験の実態を調査し,多様な人材の協働を妨げる要因を検討することを目的とした.2022年にある教育研究機関の教職員を対象として自記式無記名アンケート調査を実施し,回答を統計的手法にて,また疎外感や差別を感じた体験の自由記述を質的研究手法であるSCATにて分析した.アンケート実施の結果,105名(回答率35.9%)の回答を得た.単純集計では疎外感や差別の要因のうち「職位・職種」において最多の21名が体験ありと回答し,次いで「ジェンダー」8名,「心身の障害」6名と続く.

基本属性を独立変数とし疎外感や差別されたという体験を見聞きしたと回答した要因数を従属変数としてMann-WhitneyのU検定にてその差を検定したところ,介護の必要な親族のいる回答者と教員において,疎外感や差別を感じる体験があると回答した者が有意に多かった(p < 0.05).自由記述欄からは,疎外感や差別を感じる体験を構成する概念要素として,「固定観念や思い込みによる排斥」「周囲の職員への遠慮」「職場環境の上下関係」が抽出された.本研究は一機関を対象とした小規模なものであり即時の一般化は困難であるが,疎外感や差別を感じやすい労働者の個性や疎外感や差別の要因となる体験の要素を明らかにすることができ,職場環境の改善を検討する際の一助となると考える.

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© 2023 独立行政法人 労働安全衛生総合研究所
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