抄録
従来から土地利用や建物用途は、集塊性といった観点においては、主に2次元空間で解析されてきた。しかし現実の都市は2次元ではなく3次元空間として構成されていることは想像にかたくない。そこで本稿では、2次元空間の土地利用解析に用いられてきた、土地利用の集塊性をあらわす1つの指標「JOIN」を3次元空間に展開し、3次元空間における土地利用または建物用途の集塊性をあらわす指標を構築した(2次元と同様に JOINと呼ぶ)。またその統計的有意性について検証を行った。その過程においてランダムに配置された建物用途(以下、ランダムパターン)におけるJOINの平均と分散を理論的に導出した。さらに、このランダムパターンにおける JOINの平均と分散をもとに JOINを基準化し、その特性から、基準化されたJOINを用いることにより3次元空間においても、建物用途の集塊性の把握が容易となることが明らかとなった。最後に、ある設定のもと行った3次元空間における建物用途を想定したシミュレーションの結果を「JOIN」による集塊性から評価し、3次元空間特有の用途配置の特性を導き出した。 JOINの3次元への展開は、2次元空間では水平方向のみであった JOINが3次元空間においては垂直方向にも発生することから、垂直方向の JOINについても計測を行うことを試みた。これにより本稿で定義した都市モデル内ではあるが(都市モデルについては本文参考)、JOINを3次元空間へ展開することができた。JOINの有効性は、3次元空間における建物用途を想定したシミュレーションにより検証を行った。集塊性が「高くなる」パラメータを与えたシミュレーションを行い、その結果において計測した JOINが、「集塊性が高いことを示している」ということを統計的有意性から検証し、有意性が認められた。 この過程において、ランダムパターンのJOINの平均と分散を理論的に導出した。これにより有意性の検証が容易になったことに加え、これらをもとにシミュレーション結果から得られる JOINを基準化し、その基準化された JOINは、集塊性を明確にあらわすことができることが明らかとなった。本稿では、用途同士が集塊性を持たない、同種の用途が正の集塊性をもつ(この場合同種用途は集塊する)、負の集塊性を持つ(同種用途は分散する)、また、異種用途が互いに正の集塊性をもつ(異種用途が集塊する)、負の集塊性をもつ(異種用途は分散する)、という5つのケースについてシミュレーションを行った。それぞれのケースをあらわすパラメータを与えたシミュレーション結果から、基準化された JOINは、例えば同種の用途が正の集塊性をもつようにパラメータを与えた結果から得られる基準化された同種用途のJOINは正の値を示す、という具合に、「0」(ランダムパターン)を境界として、正の集塊性を与えた場合は正の値を示し、負の集塊性を与えた場合は負の値を示すこととなる。この特性により、計測を行った用途の JOINは、ランダムパターンをもとに基準化することで、その用途の傾向(集塊か分散か)の把握が容易となった。最後に、3次元特有の空間構成のひとつのケースとして、隣接するビル間をつなぐ「スカイデッキ」の3次元建物用途に与える影響についてシミュレーションを行い、その結果を JOINを用いて集塊性の観点から考察を行った。そこから、特定階層に設けられるスカイデッキは、JOINに、つまり建物用途の「集塊」「分散」といった傾向に強い影響を与えることを示した。またその影響は、1階におけるJOINと上層階におけるJOINの間で、逆の傾向を示すことが明らかとなった。例えば10階建ての建物が並ぶ街区の6階にス