都市計画論文集
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最新号
都市計画論文集
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
  • 杜 文茹, 坂井 猛, 洪 銅基
    2026 年61 巻1 号 p. 1-8
    発行日: 2026/04/25
    公開日: 2026/04/25
    ジャーナル フリー

    本研究は1949年以来の中国の都市景観関連政策の変遷と特徴を明らかにすることを目的とする。都市発展の過程で発生した景観問題を解決するために、中国はすでに景観に関する条例を公布したが、中央政府の都市景観に関する法律はまだ公布されていない。初期には、政策は「景観」ではなく都市機能に重点を置いていた。時間が経つにつれて、人々の注意力は生態保護、文化遺産、地域の特色に移り、特に2012年に「美しい中国」理念を発表してた。

  • 上田 一慶, 田中 勝也
    2026 年61 巻1 号 p. 9-16
    発行日: 2026/04/25
    公開日: 2026/04/25
    ジャーナル フリー

    本研究では、猛暑の頻発と自転車利用の増加を背景として、横浜市の歩道環境改善に対する市民選好を明らかにすることを目的とした。街路樹の「高さ」と「本数」、自転車レーンの「設置位置」、および「支払金額」を属性とする選択型実験を実施し、移動手段別の異質な選好を混合ロジットモデルにより推定したうえで、限界支払意思額(MWTP)を算出した。分析の結果、歩行者や自転車利用者においては、街路樹の「高さ」より「本数」が高く評価され、物理的に分離された自転車レーンへの支持が顕著であった。一方、自動車利用者は相対的に評価が低く、費用負担に関する受容度にも差があることが示唆された。これらの知見は、快適性と安全性を両立させる都市空間の設計や費用対効果に基づく政策立案において貴重なエビデンスとなり、持続可能で包摂的な歩道空間整備の推進に寄与し得る。

  • 小西 秀明, 松中 亮治, 宇野 伸宏, 西垣 友貴
    2026 年61 巻1 号 p. 17-32
    発行日: 2026/04/25
    公開日: 2026/04/25
    ジャーナル フリー

    日本の地方都市では,居住地の拡散による公共交通利用の低迷,交通弱者の増加といった問題が生じており,解決策として,移動サービスへの自動運転技術の導入が進められている.将来的には,共有型完全自動運転車両(SAV)の導入が予想されるが,SAV導入により,居住地の拡散や公共交通利用の減少がさらに進行する可能性がある.本研究では,都市内交通シミュレーションモデルおよび土地利用交通モデルを用い,地方都市にSAVが導入された場合の都市構造および社会的便益を経年的,定量的に分析した.また,公共交通施策と居住施策に関して,施策開始時期の異なるシナリオ分析を行った.その結果,SAV導入時に施策を行わない場合,居住地の拡散と公共交通利用の減少が進行することを示した.また,SAV導入前に居住誘導施策のみを実施した場合,社会的便益が最も大きくなること,SAV導入前に居住誘導施策と公共交通の運行本数増加施策を同時に実施した場合,居住地の拡散が最も抑えられ,公共交通利用が増加することを示した.

  • 「洞」を対象として
    朴 成萬, 岡田 潤, 尹 喆載, 出口 敦
    2026 年61 巻1 号 p. 33-43
    発行日: 2026/04/25
    公開日: 2026/04/25
    ジャーナル フリー

    本研究は、韓国の地方都市における洞を対象に、商業集積地を抽出し、各集積地における店舗および人口の集積度の変化傾向を分析したものである。さらに、商業機能の衰退抑制や維持に向けて、商業集積地における店舗の開業・廃業と立地特性との関係性を明らかにすることを目的とした。分析の結果、中心商業集積地と近隣商業集積地では、店舗の動態や集積立地に関わる要因に違いが見られ、それぞれに応じた商業活性化戦略の必要性が示された。また、商業集積地内においてもエリアごとに店舗立地の特性が異なることが明らかとなった。これらの知見は、商業集積地内の居住人口のコントロール、公共施設の配置や民間施設の立地誘導など、自治体の都市計画において有用な示唆を提供するものである。

  • 任 伊晗, 大澤 義明
    2026 年61 巻1 号 p. 44-51
    発行日: 2026/04/25
    公開日: 2026/04/25
    ジャーナル フリー

    日本は水資源に恵まれた観光立国であり、多島海景観はその中でも特に重要な景観要素である。観光需要の回復が進む中、多島海景観の適切な管理と改善は極めて重要である。しかし近年、財政的な制約により、多くの地方観光地で緑地管理が疎かにされている。樹木や植生の成長は景観に大きな影響を与える。本研究では、多島海景観の代表例として九十九島を主な対象とし、緑地管理の観点から景観を評価し、識別可能な島数を指標として多島海景観を分析する。ポアソン過程を用いて解析数理モデルで、景観を見渡す中央視野が樹木によって遮られた場合、視認できる島の数が顕著に減少することを示す。また、樹木の成長が可視海面および視認可能な島数に与える影響についても明らかにする。

  • 2023年改正都市再生特別措置法施行規則と他の法制度との比較を通じて
    今井 隆太
    原稿種別: 論説・報告
    2026 年61 巻1 号 p. 52-59
    発行日: 2026/04/25
    公開日: 2026/04/25
    ジャーナル フリー

    2023年の都市再生特別措置法施行規則の改正により、商工会議所・商工会という民間主体による、「市町村都市再生協議会」の組織化が可能となった。本稿では、改正後の同協議会及び都市再生整備計画の作成過程と、改正前の同協議会・地域再生協議会・中心市街地活性化協議会及び計画作成過程とを、参加・協働の手続的・実質的な正当性という観点から比較した。その結果、行政案と住民・事業者意見との齟齬、複数の協議会の並存、及び個別陳情の不透明さ等の改善策となり得る一方、同協議会の組織権者の限定性、計画事業実施者との未分離、組織化要請資格の未規定、官民協議の機会と参加の無保証、及び協議の対象外となる施策の多さという検討課題があった。官民協議すらも市町村が主導する制度では、行政の資源不足が隘路化し、措置や予算の地方分権化が進んでも参加・協働が後退しかねない。計画過程の正当性向上に寄与するためには、民による提案・協議の資格及び行政の応答義務の規定、官民協議への参加資格の拡大を検討すべきである。

  • 坂村 圭, 北畠 拓也
    2026 年61 巻1 号 p. 60-67
    発行日: 2026/04/25
    公開日: 2026/04/25
    ジャーナル フリー

    本研究は市民団体等が維持管理活動を行う市民緑地に着目して、自治体等へのアンケート及びヒアリング調査により、市民団体等の活動内容と公益性の担保の実態を明らかにするものである。本研究の結果、市民団体等が維持管理を担う市民緑地は全体の約4割であり、緑化を目的とする団体や地縁組織が、主に緑地の軽微な管理、イベント実施を行なっていることを明らかとした。また、自治体等が、市民団体等の選定方法、活動を行う際の条件設定、契約締結などを通じて、団体の信頼性の担保や責任の明確化を図るとともに、技術的・金銭的支援や一定の監督体制をとることで、維持管理団体としての適格性を保証し、公益性を担保していることを明らかとした。公益的な活動の範疇は地域によって異なっている。自治体が市民と地域における「公益性」の範囲を確認し合い、共に構築していくことが望まれる。

  • 辻本 綾香, 出口 敦
    2026 年61 巻1 号 p. 68-79
    発行日: 2026/04/25
    公開日: 2026/04/25
    ジャーナル フリー

    本研究は、PFI事業における地元企業の参画が地域経済の活性化や公共サービスの質向上に資する可能性を持ちながらも、これまでの関連政策ではいかに多く地元企業を参画させるかという「量」の観点に議論が偏っており、その質や実態が十分に把握されていないという問題認識のもと実施したものである。これまでに実施されたPFI事業のうち、自治体が主体となって行った701事業を対象に分析した結果、地元企業の参画割合は増加傾向にあるが、特定の分野やリスクの低いスキームに偏っていることが確認された。また、地元企業の参画割合が高い事業では、コンソーシアムの構成企業数が多い傾向にあり、業務の細分化や統括管理の煩雑さが課題として挙げられる。さらに、代表企業として地元企業が参画している事業の割合が高い分野に着目して分析したところ、代表企業役割が限定的であり地元企業の主体的関与が十分に実現されていない分野と、独自の創意工夫が発揮され得る運営業務に関与しているケースが多い分野があることが明らかになり、「参画」には複数のタイプが包含されていることが示唆された。地元企業がPFI事業に参画することの意義を、単なる受注機会の確保だけでなく中長期的な地域運営につながる付加価値の高いサービスの展開に見出し、それを効果的に誘導することが重要である。

  • 横浜市における空き家管理台帳データを用いたヘドニック分析
    鈴木 雅智, 相場 郁人
    2026 年61 巻1 号 p. 80-86
    発行日: 2026/04/25
    公開日: 2026/04/25
    ジャーナル フリー

    本稿では、空き家管理台帳データを用いて、横浜市における管理不足空き家による外部不経済の存在を検証した。近隣から相談を受け空き家管理台帳に登録されている管理不足空き家は1戸あたり、同一町丁における戸建住宅の成約価格を約2%低下させていることが明らかになった。管理不足空き家が新しく発生する時点では追加の外部不経済も生じており、この効果は既に管理不足空き家が多く存在している町丁ほど軽減される。横浜市全体における外部不経済の総額は、一定の仮定の下で、2022年において約17億5000万円と推計された。空き家管理台帳に登録される管理不足の状態になってしまうと周辺地域に大きな外部不経済をもたらしうるため、そのような状態になる前に除却を含めた対応が重要であることが示唆される。

  • 岡山県の公立全日制高校を対象として
    樋口 輝久, 碁石 真大, 渡邊 詩穏, 氏原 岳人, 橋本 成仁
    2026 年61 巻1 号 p. 87-95
    発行日: 2026/04/25
    公開日: 2026/04/25
    ジャーナル フリー

    近年、高等学校の生徒数の減少により、全国的に高校の統廃合の議論が進められている。岡山県においても再編整備の方針が示され、実際に統廃合の議論が行われている。より良い高校の再編整備を行う上では、長期的な視点で計画や基準を設定することが求められる。そこで本研究では高校への通学時間からみた各高校の通学可能圏を設定し、その通学可能圏内の人口変化率から2050年における高校ごとの生徒数推計を行った。その結果、2050年に岡山県内の高校の生徒数は大幅に減少し、100人未満の高校が多く発生することが明らかとなった。また、推計された生徒数に基づいて統廃合シミュレーションを行い、通学利便性の変化から統廃合基準を検討した。その結果、統廃合基準を1学年60人としたとき、高校数は現在と比べて7校減少するものの、生徒の95%が少なくとも1校には60分以内で通学できることから統廃合基準として適当であると提案した。

  • 鈴木 貴之, 菅原 遼, 大森 文彦, 星上 幸良
    2026 年61 巻1 号 p. 96-101
    発行日: 2026/04/25
    公開日: 2026/04/25
    ジャーナル フリー

    本研究では,臨港地区内に立地している港湾施設の概況を把握した上で,港湾施設を都市的な機能に用途転換した先行事例を対象に用途転換に際する土地利用計画上の扱いを捉えることで,今後の港湾施設の用途転換に向けた土地利用計画の変更過程を明らかにした。

    その結果,港湾施設の都市的な機能への用途転換は,港湾計画上の用地では港湾関連用地,交流・厚生用地,緑地,都市機能用地,分区では漁港区,商港区,修景厚生港区,無分区での対応がなされていた。また,用途転換に際しての土地利用計画上の扱いは,港湾個別に柔軟な手続きや対応が図られており,特に,港湾行政と都市計画行政が同一の港湾においては,行政主体による民間事業者の公募選定や組織内調整,土地利用計画の変更対応等が行われていた。

  • 広島県福山市別所地区の砂留保全活動を事例として
    樋口 輝久, 渡邊 詩穏, 橋本 成仁
    2026 年61 巻1 号 p. 102-108
    発行日: 2026/04/25
    公開日: 2026/04/25
    ジャーナル フリー

    本研究は、広島県福山市別所地区における有志による砂留保全活動を対象に、地域住民の参加意向がいかに形成されるかを明らかにすることを目的とした。参加意向の形成には、活動の存在を「知る(認知)」ことが出発点となり、続いてその活動や対象に「価値を見出す(価値認識)」段階を経て、「参加してみたいと感じる(参加意向)」という意思形成に至る意識のプロセスが想定される。このプロセスには、個人の内在的要因と、地域社会との関係性を築いているかどうかを示す社会的資源が影響していると考えられる。本研究では、段階的なt検定および階層的な二項ロジスティック回帰分析を行い、この構造を統計的に検証した。分析の結果、「地域継承的価値」の認識が参加意向に最も強く影響しており、ソーシャル・キャピタルや性格特性は主に認知や価値認識を媒介して間接的に寄与することが明らかとなった。

  • 再エネ海域利用法の制度構造を考慮した行政法学的分析
    小林 寛, 樋野 公宏, 浅見 泰司
    2026 年61 巻1 号 p. 109-124
    発行日: 2026/04/25
    公開日: 2026/04/25
    ジャーナル フリー

    日本の洋上風力発電事業では、発電事業者は地域に基金を拠出する制度が運用されているが、その基金は法律に規定されておらず、法的な位置付けは不明確な状態にある。そこで本研究は、再エネ海域利用法における基金の制度構造を可視化した上で、基金の法的性質を分析した。その結果、基金は法定協議会での取り決めに基づく「行政契約」の一種であり、行政法の一般原則が適用されることを明らかにした。また、基金の算定式を規定する行為は「行政の自己拘束」として平等原則を確保する措置と解され、行政の恣意的な意思決定への統制として機能することを示した。加えて、算定式を超える規模の拠出には「異なる取扱いをすることを相当と認めるべき特段の事情」が「地域の状況」から説明される必要があり、その判断過程の適正性を合理的に説明できること、すなわち相応の説明責任が課され、これが財源の規律として機能することを示した。

  • 宮内 爽太, 田中 伸治
    2026 年61 巻1 号 p. 125-135
    発行日: 2026/04/25
    公開日: 2026/04/25
    ジャーナル フリー

    日本の駐車場制度は戦後のモータリゼーションに対応して設計されたが、人口動態の変化やカーシェアの普及等により駐車需要は縮小し、駐車場の過剰供給が顕在化している。にもかかわらず、現行制度は需要追随的なアプローチによって供給を促しており、非効率的な土地利用と自動車依存を助長している。本研究では、需要追随型から需要管理型へ移行する都市を対象に国際的な駐車場政策を分析し、日本への適用可能性を検討する。結果として、多くの都市で駐車場の新設抑制や削減を目的に、整備量への上限を設けるほか、課金等の財政的措置を導入し、公共交通アクセスを指標に供給制限を組み込んでいた。これは駐車場政策を交通需要管理と一体で運用する必要性を示している。ボストンはその典型であり、地区単位での上限値設定や新たな指標に基づく原単位の再設定を行うと同時に、開発事業者に対して交通需要管理施策(TDM)の実施を求めている。

  • PlaNYC・OneNYCの分析から
    小松 俊也, 真鍋 陸太郎, 村山 顕人
    2026 年61 巻1 号 p. 136-148
    発行日: 2026/04/25
    公開日: 2026/04/25
    ジャーナル フリー

    ニューヨーク市は、米国の多くの大都市が採用するコンプリヘンシブ・プランを策定しない例外的な都市であるとされる。歴史的に、同市は市全体の計画を策定してこなかったが、2007年にブルームバーグ市長の下で「PlaNYC」を策定して以降は、対象分野や策定・実施手法を漸次変えながらも、市全域の方針を描き、その実現に向けた施策を管理する戦略的計画の策定を続けている。本研究では、2007年から2023年までに策定された「PlaNYC」及び「OneNYC」を分析し、人口・産業の集積による高度な複雑性を持つニューヨーク市が独自に構築してきた戦略的計画の枠組みと、その中の空間的な施策の計画・実施手法を明らかにした。これにより、総合計画に空間的要素を欠く日本の都市においても参考となる計画手法について示唆を得た。

  • 竹内 真雄, 嚴 先鏞, 鈴木 勉
    2026 年61 巻1 号 p. 149-158
    発行日: 2026/04/25
    公開日: 2026/04/25
    ジャーナル フリー

    人々が需要に対してどの程度効率的に移動しているか把握することは,将来の交通網整備に向けた課題である.本研究では,東京都におけるGPS データを用いて,移動効率の地域格差と交通軸を客観的・定量的に把握した.第一に,需要が高いものの非効率的である地域間として,都心東側や多摩地域の鉄道空白地域が抽出された.第二に,鉄道路線と直交する方向や幹線道路沿いで需要に対して移動効率が低く,現在整備中の交通網と並行する区間でも該当することなど,局所的な移動効率と需要の関係を把握した.第三に,交通軸は主に鉄道路線に沿って抽出され,その強度は路線によって異なることを明らかにした.これらの知見は,交通インフラの改善区間の特定に対し有益な示唆を与える.

  • カッツ理論を準用した「テクニカルスキル」「ノンテクニカルスキル」の概念を用いて
    内藤 泰典, 田口 太郎
    2026 年61 巻1 号 p. 159-169
    発行日: 2026/04/25
    公開日: 2026/04/25
    ジャーナル フリー

    本研究は、小規模自治体における職員の昇任に伴う性質別能力(テクニカルスキル:TS、ノンテクニカルスキル:NTS)の習得認識の実態を明らかにすることを目的とした。A県B町の行政事務職員を対象に半構造化インタビュー調査を実施し、昇任に伴う性質別能力の重要性認識の変化、昇任時点における性質別能力の習得状況(習得認識)及びその習得を阻害する要因を分析した。その結果、昇任に伴いNTSの重要性は高まるものの、業務過多、人事制度、組織風土といった個人的・制度的・組織風土的要因が相互に作用し、必要なNTSの習得が十分に進んでいないことが明らかになった。本研究の結果は、小規模自治体における人材育成及び能力開発の構造的課題を示す実証的知見である。

  • 濱松 翔, 伊藤 香織, 高柳 誠也
    2026 年61 巻1 号 p. 170-177
    発行日: 2026/04/25
    公開日: 2026/04/25
    ジャーナル フリー

    近年,ICTの進展やCOVID-19の流行によって,テレワークやコワーキングのように,勤務先に通勤して働く従来の働き方とは異なる勤務形態が注目されている.勤務先の近くに住む重要性の低下は,価値観やライフスタイルにも変化をもたらし,就業者の居住地選択に影響を与え得る.本研究では,通勤日数の減少や活動時間の配分の変化を考慮した居住地効用モデルを構築し,働き方の変化やそれに伴うライフスタイルの変化が就業者の居住地選択に与える影響を考察した.本研究の主な成果は以下の通りである.(1)都市ごとの特徴量として,居住者の私事活動・移動時間を考慮した居住地効用モデルを構築し,都心への通勤日数や私事活動への時間配分の変化を加味して,働き方やライフスタイルを考慮した就業者の居住地効用を示した,(2)通勤日数の減少が,都心から離れた自治体への居住を促進することが示唆された,(3)サテライトオフィス勤務が増加すると,都心から離れた地域で,かつサテライトオフィスにアクセスしやすい自治体が居住地として選択されやすくなる可能性が示唆された,(4)都心から離れた自治体の一部で,都心への通勤日数が減って私事活動が多く行われる場合の効用が,都心に近い自治体で都心に従来通り通勤する場合の効用と同程度になる可能性が示唆された.一方,私事活動に伴う移動時間の地域特性により,自治体によって通勤時間の短縮効果に差がある可能性も示唆された.

  • 岩井 優祈, 山田 育穂, 長谷川 大輔, 浅見 泰司
    2026 年61 巻1 号 p. 178-190
    発行日: 2026/04/25
    公開日: 2026/04/25
    ジャーナル フリー

    本研究では,研究開発型スタートアップ企業の創業時および移転時の意思決定に注目しながらその帰結としての立地パターンを考察することを目的に,CEOを中心とした経営層へのインタビューを実施した.その結果,立地選好は成長段階に応じて変化し,初期のコスト効率の重視から,R&Dへの適合性の追求,さらには場所のステータス性の獲得へと志向が移行することが明らかになった.スタートアップ企業にとって一等地への立地は企業の信用や将来性を示す象徴的価値として機能し,高度な技術・知識を有する人的資本の獲得を優位に進める手段となることが示唆された.一方,実験室・製造設備の利用可能性や建物の耐荷重・電力容量などの設備要件を満たすことと場所のステータス性を追求することは両立しがたく,研究開発型スタートアップ企業には物理的制約をクリアするための周辺地域への移転と,象徴的価値を求めた都心部への移転という,2つの異なる立地ダイナミクスが生じうることが示された.

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