都市計画論文集
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  • 魏 源鴻, 松井 大輔
    原稿種別: 研究論文
    2025 年 60 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2025/04/25
    公開日: 2025/04/25
    ジャーナル フリー

    長春では、満州国時代の近代建築が保存・活用されている。本研究では、長春市における満州建築の転用に関する歴史的経緯・分布状況と転用内容を明らかにする。さらに、転用の内容と歴史的経緯の関係性を解明する。研究結果は次の通りである。 (1)満州建築の転用は使用性転用から活用性転用へと展開している。(2)転用は主に4つの歴史文化街区に分布している。(3)転用は観光利用や用途復原、用途の混在のような、公開性の高いものへと進展している。(4)戦後直後は都市計画の方針の変更が要因で、満州建築の転用が促進された。また、市独自の建造物保全施策や観光施策の充実が影響し、柔軟性のある活用を実現してきた。

  • 横浜市栄区湘南桂台地区を事例として
    上野 正也, 松本 安生, 山家 京子, 柏原 沙織
    原稿種別: 研究論文
    2025 年 60 巻 1 号 p. 9-18
    発行日: 2025/04/25
    公開日: 2025/04/25
    ジャーナル フリー

    本研究は横浜市の郊外住宅地である湘南桂台地区を対象に住民意識調査を実施し、住民の居住環境の評価的意識と感情的意識の2つの側面から定住意向を規定する要因を明らかにした。結果、自然や公園などのオープンスペースに対して高い満足度であったが、利便性に対する評価は低かった。また、定住意向は感情的意識である地域愛着と強く関連がみられた。さらに、公園や道路といったオープンスペースのほか、商業施設周辺といった場所への愛着がある人ほど地域愛着が高い傾向にあった。これらの場所は、地域交流イベントが開催されるほか、日常的に利用される場所である。これらより、計画的に配置された空間に、日常・非日常の双方を含む生活が重なることで地区を一つの単位とした生活圏の充実につながると考えられる。

  • 来訪者の回遊行動と売買活動の心理に着目して
    若松 南海, 矢口 哲也
    原稿種別: 研究論文
    2025 年 60 巻 1 号 p. 19-26
    発行日: 2025/04/25
    公開日: 2025/04/25
    ジャーナル フリー

    秋葉原はサブカルチャーの中心地として独自の発展を遂げてきた。その多くはホビー関連の中古品店で、インターネットの普及やCOVID-19の流行にもかかわらず拡大を続けている。秋葉原は、本研究の目的は、店舗の立地特性と来訪者心理から、秋葉原商業集積における持続的な発展のメカニズムを明らかにすることである。調査の結果、(1)買取販売という商業形態と店舗種混在が、探索性・偶発性のある都市空間を生み出していること(2)店舗を介した来訪者同士による中古品の売買が生み出す幅広い需要と供給が、市場に対する顧客の信頼獲得に繋がっていることが明らかになった。この2つの要素が、市場全体における中古品と来訪者の好循環を促し、市場の持続的発展性を支えていると考えられる。

  • 宅配サービスに対する評価と地域とのつながりに着目して
    岡村 篤, 橋本 成仁
    原稿種別: 研究論文
    2025 年 60 巻 1 号 p. 27-36
    発行日: 2025/04/25
    公開日: 2025/04/25
    ジャーナル フリー

    宅配便の再配達の削減に関する取り組みが全国各地で行われている。その1つとして宅配ロッカーを公共スペース等に設置する取り組みが行われている。この宅配ロッカーについて、利用促進が課題であるが、どのようなニーズがあるかといったことが明確となっていない。そこで、本研究では、宅配ロッカーに対する利用意識及び求められるニーズを明らかにするとともに、宅配ロッカーの利用に対する意識構造を明らかにした。その結果、宅配ロッカーの利用促進のためには、既存の宅配サービスの向上や、宅配ロッカーの受け取り・発送・利用のしやすさに関する機能の充実、自家用車で移動可能な範囲内に宅配ロッカーを設置すること、自家用車で持ち帰りやすい宅配便を宅配ロッカーに保管することが重要であることが示唆された。さらに、宅配ロッカーの利用意識の向上は、地域に対する信頼感の向上にも寄与することが示唆された。

  • 川越一番街を事例として
    西川 亮, 陳 斐然
    原稿種別: 研究論文
    2025 年 60 巻 1 号 p. 37-45
    発行日: 2025/04/25
    公開日: 2025/04/25
    ジャーナル フリー

    本研究は、川越一番街歴史地区の事例として、歴史的地区の保存と観光開発の過程と実態を把握し、観光開発に対する老舗商店の実際の対応を明らかにすることを目的とする。調査を通じて、老舗店の観光開発に対する対応や意識には、いくつかのパターンがあることが明らかになった。具体的には、①老舗商店が歴史的に扱ってきた商品やサービスを大きく転換しなくても観光客の来訪目的や消費行動に適合できる店舗パターン、②観光客向けに商品やサービスを拡張しやすいパターン、③観光客との接点が少なく、商品やサービスを観光客向けに転換することが難しいパターンである。①や②のタイプは積極的に観光客向けの対応を行っているが、それぞれの老舗としての拘りを大切にしている。③は、経営上は観光客に依存しないビジネスモデルで生き残りを図っているが、背景には観光客向けの店舗に転換したくない店主の意向もある。

  • 佐藤 千江, 加藤 博和, 徐 非凡
    原稿種別: 研究論文
    2025 年 60 巻 1 号 p. 46-55
    発行日: 2025/04/25
    公開日: 2025/04/25
    ジャーナル フリー

    全国の自治体が策定している立地適正化計画(以下、立適計画)を対象に、脱炭素化考慮の実態を明らかにすべく、脱炭素化促進施策、関連計画との連携実態、および計画策定過程における議論内容を確認した。さらに、自治体担当者の脱炭素化推進意向と立適計画で脱炭素化を考慮するうえでの課題を明らかにした。結果、立適計画全444のうち4計画は、誘導施設や都市機能・居住誘導区域の設定根拠に脱炭素化促進に関する文言を含んでいた。また、コンパクトシティ形成の効果として都市の脱炭素化推進を見込んでいるものの、現行の都市計画制度や計画策定体制では、具体的な脱炭素化推進施策を議論・検討することは困難であることが明らかになった。

  • 能動的な外出の促進(RX: Real Space Transformation)に向けて
    石橋 澄子, 松場 拓海, 谷口 守
    原稿種別: 研究論文
    2025 年 60 巻 1 号 p. 56-65
    発行日: 2025/04/25
    公開日: 2025/04/25
    ジャーナル フリー

    人々の生活と都市空間は密接に相互依存している。従って外出や活気ある都市での活動を臨時には、都市空間が「訪問したい場所」であることが重要である。 n=1,191)を用いて、ような「訪れたい場所」はどのような特徴を持っているのか、そのような場所が身近にあり、そして理想的なこれらと外出に対する感情の関係性を調査した。結果、(1)魅力的な場所の存在と外出への肯定的な感情には強い関係あること、(2) 進んでいない、歴史的な建造物がある、歩行者に優しい空間が人気であること、(3)「訪れたい場所」は多機能から単機能まで7種類にも分類できること、(4)公共的な交通機関や徒歩・自転車の交通環境が良いほど魅力的な場所へのアクセスが良いことが示されました。の人々を惹きつける多様な都市空間を提供することの重要性を示唆している。

  • 慶尚北道の「邑」・「面」を対象として
    朴 成萬, 岡田 潤, 尹 喆載, 出口 敦
    原稿種別: 研究論文
    2025 年 60 巻 1 号 p. 66-77
    発行日: 2025/04/25
    公開日: 2025/04/25
    ジャーナル フリー

    本研究は、韓国の慶尚北道の農村中心地を対象に都市サービス施設の増減を把握するとともに、農村中心地の立地や後背圏の人口等の社会動態との関係性についての分析に基づき、都市サービス施設集積拠点としての農村中心地の類型と特性を明らかにすることを目的とする。結果として、特に、都市サービス施設減少型の農村中心地については、都心部や都市圏中心都市、大型商業施設への移動や立地関係において特徴が見られたため、施設数の増加・維持を図るよりも、交通関連施策により、他の農村中心地や、都心部・都市圏中心都市などへのアクセス性の向上を図ることの有用性が示唆された。

  • 栗田 治
    原稿種別: 研究論文
    2025 年 60 巻 1 号 p. 78-93
    発行日: 2025/04/25
    公開日: 2025/04/25
    ジャーナル フリー

    本研究では,1次元の都市空間に単一の施設,あるいは同一種の複数の施設の存在を想定する.そして旅行者が都市内を移動する途中で施設に立ち寄る確率が,出発点から施設までの距離に依存するものと仮定する.具体的には立ち寄り確率にロジスティック型成長関数を採用する.この仮定のもとで,各施設への立ち寄り率を定式化し,トリップ分布が一様なときにこれを求め,総立ち寄り率(全トリップのうち,いずれかの施設に立ち寄る率)を最大化する施設配置の数値解を求め,それがロジスティック型成長関数の2つのパラメタに依存する様子を詳細に観察する.さらに,このロジスティック型立ち寄りモデルを高速道路のサービスエリアとパーキングエリアへの立ち寄り現象に適用し,現実データを用いて,パラメタ推定を行った結果を述べる.この数値解析を通じて,立ち寄り確率がロジスティック型成長関数にしたがう場合が実際にある,という示唆が与えられる.

  • 宮城・岩手各県におけるまちなか再生計画対象自治体の分析
    内田 香屋子, 近藤 民代
    原稿種別: 研究論文
    2025 年 60 巻 1 号 p. 94-102
    発行日: 2025/04/25
    公開日: 2025/04/25
    ジャーナル フリー

    本稿では、東日本大震災の復興事業の一つである「まちなか再生計画」をとりあげ、震災後におこった当該計画の対象自治体の人口移動との関係を考察した。500m人口メッシュデータにより各自治体の分位数を計算し、人口増加・減少の顕著である地点を特定した。分析の結果、沿岸部の激甚被害区域は、顕著な人口減少がみられた。この沿岸部に現地再建された商業施設の周辺には住民の分布が限定的であった。一方、災害公営住宅を中心とする住宅は内陸部に新設されており、分位数による人口の増加地点と重なることが多かった。復興事業により整備された「まちづくり」と「住まいづくり」はそもそも計画的連携がなかったため、人口減少・高齢化が加速した被災地の地域課題の解決には道半ばという結果が得られた。

  • 草加市都市計画マスタープラン策定の事例分析
    峯 敬泰, 村山 顕人, 真鍋 陸太郎, 小泉 秀樹
    原稿種別: 研究論文
    2025 年 60 巻 1 号 p. 103-112
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/25
    ジャーナル フリー

    都市計画マスタープランは個別計画の一つとなり、統合的な空間計画は日本に存在しなくなった。一方で、土地利用のみならず、住宅、福祉、医療など都市活動に関わる様々な要素を含めた総合的な空間計画が改めて求められているが、その策定手法は確立されていない。

    近年、いくつかの自治体が、市の分野別マスタープランを統合した空間計画を策定する新たな取り組みを始めている。草加市都市計画マスタープランの事例分析を通じて、他自治体への応用に必要な総合的な空間計画の策定手法を明らかにした。

    (1) ソフト政策である福祉機能等の予測で用いられた計画策定手法

    (2) 都市計画と関連分野、多様な主体の方向性の統合で用いられた計画策定手法

    (3) 空間計画への統合空で用いられた計画策定手法

  • 佐藤 真大跳, 森中 啓渡, 仲村渠 良, 長﨑 右京, 早田 奨斗, 森兼 優, 加藤 真也
    原稿種別: 研究論文
    2025 年 60 巻 1 号 p. 113-123
    発行日: 2025/04/25
    公開日: 2025/04/25
    ジャーナル フリー

    日本の空き家の数は年々増加しており、その問題はより深刻化している。「空き家バンク」は日本の空き家流通の促進や、空き家数の削減を目的とした制度である。しかし、空き家バンクは、認知度が低いだけでなく、掲載されている物件も少ないという問題がある。本研究の目的は、いかにして空き家バンクの認知度を高め、空き家バンクの掲載件数を増加させるかと共に、空き家の需給ミスマッチを減らすためにどこに重点を置いて対策を講じるべきかを明らかにすることである。また、本研究の特徴は、地方自治体や空き家バンクへの聞き取り調査を基に独自のアンケートを設計し、全国調査に基づいて多くのデータを集めた上で定量分析を行っていることである。

  • 地方都市サン・セバスチャン市の戦略計画と社会評議会を対象として
    中西 由紀, 中島 弘貴, 新 雄太, 小泉 秀樹
    原稿種別: 研究論文
    2025 年 60 巻 1 号 p. 124-133
    発行日: 2025/04/25
    公開日: 2025/04/25
    ジャーナル フリー

    都市の最上位計画である総合計画の策定には、民主的ガバナンスの必要性や行政の政策実行力の低下を踏まえ、代表的なステークホルダーと行政の協働が求められる。本研究では、スペインのサン・セバスチャン市における直接参加型プラットフォームである社会評議会とセクター評議会に着目し、それらの組織構造と運用実態を分析する。社会評議会では、77の組織から成るステークホルダーが日本の総合計画にあたる戦略計画の策定に関与し、また個別計画分野を代表するステークホルダーが各セクター評議会を通じて個別計画の策定・実施に携わっている。これらの直接参加型プラットフォームの相互作用により、戦略計画と個別計画の策定から実行に至るプロセスが連動し、PDCAサイクルが確立されていた。

  • 浅野 純一郎
    原稿種別: 研究論文
    2025 年 60 巻 1 号 p. 134-148
    発行日: 2025/04/25
    公開日: 2025/04/25
    ジャーナル フリー

    本研究は、豪雨災害の頻発化・激甚化に対し、流域治水を踏まえたハード・ソフトの一体的な水害対策が求められる中で、立適計画の居住誘導区域設定における浸水想定区域除外(リスク回避)に計画的意義を認める立場から、その実態と要因を明らかにするものである。人口10万人以上の地方都市98を対象とした悉皆的調査より、約8割の自治体で浸水想定区域の重複が居住誘導区域設定に影響していること、浸水想定区域除外の閾値と重複度の深刻さには相関があること、居住誘導区域設定の基準が緩い都市では除外を見送る例が多いこと、閾値非設定や非除外の要因や理由は重複度の深刻さが主要因であること等を明らかにした。他方、設定した閾値以上の区域を除外した事例には、除外範囲が限定的、閾値の柔軟な設定、除外可能な土地利用、柔軟な例外の設定といった共通要件が見られた。これらを踏まえ、リスク回避を積極的に進める意味やその方法について考察した。

  • 渋谷区玉川上水旧水路緑道を利用した仮設 FARM を対象として
    関根 萌, 松浦 健治郎, 何 景美
    原稿種別: 研究論文
    2025 年 60 巻 1 号 p. 149-156
    発行日: 2025/04/25
    公開日: 2025/04/25
    ジャーナル フリー

    本研究では、東京都渋谷区の玉川上水旧水路緑道内を活用した「仮設FARM」を対象として、公有地を活用した農的空間の実現手法を、運営面と空間面から分析を行った。結果として、運営面では、渋谷区では緑道再整備の計画段階から市民との意見交換を積極的に継続して行うことで、市民の意見を汲み取り、計画に反映しながら農的空間の導入を決定したことが明らかになった。運営面では、市民が主体となり、区職員・協力企業のサポートによって円滑に日々の運営が進められていた。また、市民が活動に参加できる機会が設けられ、全ての市民が利益を享受できる工夫が見られた。空間面では、鍵の有無や高さの異なる多様なプランターの効果的な使い分けが行われており、私的利用と公共性の両立を行っていることが確認できた。その他、プランターを目隠しとして利用し、近隣のプライバシーを保護したり、仮設FARMの各種SNS情報を目につく位置に掲載したりなど、公共空間ならではと言える周辺住民への配慮が見られた。

  • 増田 初音, 葉 健人, 土井 健司
    原稿種別: 研究論文
    2025 年 60 巻 1 号 p. 157-165
    発行日: 2025/04/25
    公開日: 2025/04/25
    ジャーナル フリー

    災害時には自助・公助・共助の連携が重要であるが,行政の資源制約から公助の限界が指摘されている.このため,自助・共助への期待が高まっているものの,高齢化・人口減少によるコミュニティの希薄化などにより共助の育み方に課題を抱えている.本稿では,コミュニティ強化に資する住民間の日常的な交流機会の増加が日々のポジティブな感情へも影響を与えることを踏まえ,両者が災害時の共助の行動意図へ与える影響を検証することを目的とする.磯村の既往研究を参考に,Oldenburgが論じた1st, 2nd, 3rdの3つのplaceを,わが国の都市の文脈に合う日常的な交流の場(プレイス)として再定義した.高齢化が進むオールドニュータウンである茨木市山手台の住民へ,各プレイスにおける交流実態やそれにより生じるポジティブ感情,および地震災害時の自助・共助についての意識調査を行った.共分散構造分析により,2ndプレイスでのポジティブ感情を伴う交流活動が,1st, 3rdプレイスでの交流活動へ影響するとともに,これらに加え自助が共助を促進することが示された.さらに,磯村の1st,3rdプレイスの重複領域を指摘し,これが日常・非日常にまたがる共助を生み出す第四のプレイスとして措定されうることを示唆した.

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