抄録
地方都市では、郊外居住化の進展が更に他の都市機能の郊外化を押し進めるという循環構造のもと、都市の低密拡散化、都心の空洞化現象が生じている。本来このような都市の郊外化は、都市計画区域における区域区分制度(線引き)と、それを担保する開発許可制度などの都市計画法により、行政においてコントロールされるべきものであった。しかし、現行の開発規制下では本来市街化を抑制すべき地域である市街化調整区域においても例外的に様々な開発行為、建築行為が行われている。さらに、既存宅地制度のような規制緩和的措置の存在によって開発は更に進み、2001年に制度そのものが廃止されるまでに至っている。 本研究では、都市開発の郊外化が進展する代表的な地方都市である群馬県前橋市をケーススタディとして、開発許可、既存宅地確認による都市開発動向の推移と関連する都市政策を時空間的に分析し、これらの複合のもとで起こる都市開発の郊外化のメカニズムを明らかにする。また、その結果に基づいて開発の際の条項と開発場所をロジット型の選択モデルで表現する開発モデルを構築し、政策シミュレーションを行う。これらを通じて規制制度運用に関する評価を行い、さらに既存宅地制度廃止後の規制制度運用のあり方を検討することを目的としている。 成果としては、まず都市開発動向および線引きや住宅団地開発等の政策に関する時空間的かつ総合的な分析の結果、郊外部の住宅団地開発が市街化区域に編入され、その市街化区域の拡大によって連坦条件を満たす区域が拡大し、既存宅地開発が郊外化するというメカニズムの存在が明らかになった。以上を踏まえた、都市開発発生モデルを構築については、t値やモデルの再現性については比較的良好なものが構築された。規制制度運用に関するシミュレーションの結果、市街化区域抑制型、既存宅地確認要項抑制型の政策については開発の郊外化抑制に一定の効果があることが認められたが、現行の既存宅地制度廃止型のみでは、郊外部での開発抑制にはつながらない可能性が指摘された。以上より、土地利用およびインフラ整備に関する各種の都市政策の運用が多元的に行われてきたことが、開発の郊外化を引き起こした原因となっているおり、各種政策の関連性を詳細かつ明確なものにし、都市政策を一元的に運用することが今後の郊外化抑制のためには必要であると考えられる。