都市計画論文集
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ドイツにおけるエコロジー農業による社会と環境の持続的発展に関する研究
ユネスコの生物圏保存地域ロエンにおける事例 『食べて保全』
飯田 恭子ズスト アレクサンダー
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2005 年 40.3 巻 p. 1-6

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抄録
ドイツのロエンでは自然保護団体が中心となり、環境共生型の農業で絶滅に瀕した在来家畜の保全活動『食べて保全』を繰り広げ、その波紋が広がり、行政が持続的発展を目指す総合計画を策定し、環境保全型のエコロジー農業が形成する景域環境を将来像に据えた。生産者や飲食店が協力してその将来像の実現を目指し、人体の健康のみでなく環境や生態系や風景をも保全する地産地消活動を展開している。しかし、ロエンの小規模な環境・生態系保全型のエコロジー農業は、一部の見識者を除く、大衆消費者の安くて安全という食べ物に対するニーズに答えられずに伸び悩んでいる。消費者のロエンの産物に対する意識調査では「自らの健康と欲求を満たす食」が望まれ、「持続する地域社会と環境のための農業」への関心が低く、「食べ物」と生産地の「場所性」のつながりを風景に読み取れる人は非常に少なく、保全に関する責任も感じていないことが分かった。消費文明に切り離された食と農の関係を、生産者・飲食店と顧客とのコミュニケーションで、消費者と風景の関係づくりを通して再構築していくことが、ロエンの持続可能な農業と地域づくりの今後の課題であろう。
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© 2005 公益社団法人 日本都市計画学会
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