抄録
筑波研究学園都市では 2005年 8月の鉄道開通にともない、分譲マンションの供給が活発化しつつあるなか、都市建設の当初に大量供給された公務員宿舎において空き住戸が発生している。この空き住戸の増加に対応して、宿舎の一部廃止が始められているものの、廃止方針と宿舎需要の関係は必ずしも十分に検討されていない。そこで本研究は、多様な形式で構成される宿舎の居住状況について、宿舎が立地する地区と住戸の規格を分析軸に設定し、入居率と転出入の状況を指標として経年的に分析した。その結果、1)空き住戸は転入世帯の減少を要因として郊外部の宿舎において増加していること、 2)中心部の宿舎の中には、近年になり継続居住率が上昇し、定住化の傾向がうかがえるところがあること、の 2点を明らかにした。つづいて、すでに実施された廃止措置の方針と今回明らかにした居住状況との関係について考察を加えた。今後は居住世帯の流動性に着目して宿舎の役割を検討しなおし、空き住戸だけでなく転出入の動向にも注目した廃止住戸の選定を提起した。