抄録
タイにおいては、市民により都市及・地域を発展させていこうという運動が1992年を前後して発生し、近年それが発展してきている。本論文は、このタイにおける市民による都市・地域発展運動が発生・展開していく過程及び、これらの運動の特徴と課題を明らかにし、このような運動が発生した社会的背景、要因に関して考察することを目的としている。トラン市の運動を事例とし、(1)運動と新中間層の関連、(2)運動の主体間ネットワークの2点に着目して、分析を行った。事例研究の結果、トラン市において運動が展開していった要因として、(1)バンコクの新中間層により形成されたNGOが触媒的な働きをして、トラン市の伝統的な市民団体の機能が変化するのを支援したこと、(2)運動が政府によるプロジェクトの一部となったことにより運動が継続したこと、(3)NGOを通じて全国的で、多層的なネットワークが形成されたこと、が指摘された。