抄録
本研究は、わが国初の本格的なLRT路線として、2006年4月29日に開業した富山ライトレールプロジェクトの、整備効果に関する実証分析の一環として、富山ライトレールのサービスレベルの向上が利用交通や沿線地域住民の交通行動にどのような影響を与えたかを、利用者実態調査、沿線住民の意向調査の結果を分析することにより明らかにした。その結果、サービスレベルの向上は利用者の満足度を向上させ、自家用車やバスなどの他の交通手段から富山ライトレールへの転換や、沿線地域の新しい交通が発生したことで、利用者は大きく増加した。特に顕著であったのは、多くの高齢女性が、買い物、通院等に活用していることが明かとなったことであり、この分析により、地方の小規模な鉄道システムにおいてさえ、サービスレベルの画期的な向上が、地域の交通に対して大きな影響を及ぼすことが明らかとなった。