都市計画論文集
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戦前の六甲山における公園系統の計画と風景利用策に関する研究
1920年代に作成された二つの山地開発計画の策定経緯と目的
山口 敬太
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2010 年 45.3 巻 p. 241-246

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抄録

1920から30年にかけて、東西30kmにおよび複数の市町村にまたがる六甲山に、行政界や都市計画区域を越えた「一大森林公園」としての位置づけをもった山地開発計画が立てられた。本研究では、この山地開発計画の策定経緯と具体的内容、およびその目的について一次史料をもとに明らかにした。その結果は以下の通りである。山地開発計画の作成主体は、兵庫県都市研究会と神戸市都市計画部であり、前者の計画原案を作成したのは、都市計画地方委員会技師兼兵庫県技師であった森一雄であった。両者ともにその山地開発の根本目的は、風致の保全を前提とした山地および風景地の開放にあり、道路と公園的施設の配置が主眼となった。道路については、兵庫県都市研究会が骨格となる幹線道路を、神戸市都市計画部が都市計画区域内の道路網を充実させる案を示し、両者により統一的な計画案が示された。またそれは、自動車用の幹線道路と徒歩道路とを織り重ねたものであり、その計画路線は遊行と自然鑑賞を満足させるように考慮された。さらには、観賞樹の植林等により風景の保護修飾をなすとともに、様々な種類の公園的施設の充実が図られた。

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© 2010 公益社団法人 日本都市計画学会
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