都市など建物が密集する空間において、日向・日陰という日照状態は時間とともに刻々と変化し、また場所により顕著な差異が表れる。日照条件を受けて、夏は暑さに耐えきれず日陰を歩き、逆に冬は寒さを少しでも和らげようと日向を歩くといったことは、誰もが経験としてあるのではないだろうか。本研究の目的は、道路面での日向・日陰という日照状況を加味したときの経路選択を考察することにある。都市内沿道建物によって影が生成されるとし、日向や日陰という日照条件を日向量というもので定義する。この日向量を用いて、日照に関する正反対の要求に応じた経路選択を論じるのである。また、道路の目的は移動である。したがって、日照状況に着目するのであれば、移動距離と日向量の両方の観点から分析を行っていかなければならない。そこで、一般の道路網において、移動距離と日照条件とのトレードオフに着目したパレート最適経路を求める。