2010 年 45.3 巻 p. 667-672
持続可能な地域のあり方が鋭く問われる中で自律的な地域発展のあり方が模索されている。そのためには広域空間政策が重要であることがさまざまな場で指摘され、近年、自律的な広域的な都市圏空間の形成に関する議論が盛んになってきており、政策的にも、多核的でありつつも機能的な補完性・連携のもとにある広域的な都市圏の形成に向けての施策展開が欧州を中心に始まっている。本研究はこのような問題意識のもとで、以下の目的のもとで進めた。第一に、広域都市圏に関する近年の代表的議論をレビューし、そのとらえ方の新たな枠組みを提示するとともに、先行するEU諸国における取組を整理する。第二に、提示した広域都市圏の枠組みに基づいて日本における広域都市圏形成の特徴をとくに地域イノベーション力の観点から把握する。第三に、広域政策の萌芽のみられる地域イノベーション政策に着目してケーススタディを行い、具体的に広域ガバナンス生成の可能性について議論する。