都市計画論文集
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アメリカ合衆国オレゴン州における成長管理政策とスマートグロース政策の変遷に関する研究
州土地利用計画制度の誕生・成長・混乱・甦生
川崎 興太
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ジャーナル オープンアクセス

2011 年 46 巻 1 号 p. 1-12

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抄録

本研究は、成長管理政策やスマートグロース政策のモデルとして現代アメリカ都市計画を先導し続けてきたオレゴン州の州土地利用計画制度の変遷を明らかにすることを目的とするものである。オレゴン州の州土地利用計画制度は、全ての地方政府に州全体の計画目標に適合した総合計画と、これと整合したゾーニング条例等の採択を義務づけ、都市成長境界線(UGB)外の農地や森林地を厳しい土地利用規制によって保全しつつ、UGB内に開発を誘導することを通じて、コンパクトな都市構造を形成することなどを目的として1973年に創設されたものである。州土地利用計画制度は、創設後における社会経済情勢や政治的状況の変化等に対応しながら20年を超える歳月の中で漸進的に体系化・詳細化され、農地や森林地の保全、スプロールの抑制、コンパクトな都市構造の形成などに大きな成果を上げてきたが、21世紀に入ると、その根幹的な部分をなす農地や森林地における土地利用規制を主たる対象として、土地の価値の低減に対する補償請求を認める法案が住民投票を通じて成立することになった。この州土地利用計画制度を根底から覆す補償請求法案の成立を受けて、近年では混乱状態から秩序を取り戻すための修正法案が採択されるとともに、創設以来30年以上が経過した州土地利用計画制度の総合的なレビューが行われ、2009年からは新たな枠組みのもとで再始動するに至っている。本研究では、こうしたオレゴン州の州土地利用計画制度の変遷を踏まえ、今後の我が国における土地利用計画・規制制度のあり方への示唆として、総合的・一元的な土地利用計画・規制制度の確立の必要性、土地利用規制の合理性に関する計画理論の再構築の必要性を指摘している。

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© 2011 公益社団法人 日本都市計画学会
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