本論文の目的は、洪積台地に谷戸を形成し、明治時代における東京市の郊外としての緑豊かな環境が一連のスプロール型開発により侵食されてきた東京都目黒川流域において、樹林が保全されてきた要因を抽出することである。上記の目的のため、景域の概念に基づく緑地構造の歴史的変遷について分析を行うにあたり、主要幹線道路や鉄道により分節される対象流域を空間単位とした上で、景域概念の前提となる対象流域の地形特性を基盤に伸展した土地利用の変遷や蓄積されてきた文化資産との関係性を考慮した。その結果、緑地構造の変遷タイプ間の比較に基づき、研究対象地で樹林が保全される主要因は、大規模な文化資産等の存在及び斜面地形であることを把握できた。