抄録
オランダ・フローニンゲン市の中心市街地北に接する北部公園は、今日、緑豊かな市民の憩いの場として、また主要自転車ルートとして機能している。しかし同公園はかつて、自動車の通過交通路として使われており、同市の労働党は、ここから車を排除することを1970年代から政策に掲げてきた。本論文は1990年代に同公園からの車の排除、そして結果としての主要自転車ルートの整備が実現するまでの経過を、その間の参加の結果、及び政党の動向の観点から分析したものである。車の排除に対しては経済団体はもとより周辺住民も強く反発し、参加の結果は圧倒的に車の排除に反対であった。しかし労働党内からの圧力によって、同党リーダーは最終的に車を公園から排除することを選択し、市議会は1票差で排除を可決した。このことは、環境に負荷を与えない交通政策を導入していくうえでの、政党を媒介としたリベラル・デモクラシーの有効性を示唆している。