本研究では近年増加する葬儀場に係る紛争に着目し、条例等による紛争調整の可能性を、紛争の発生構造、また条例等導入のきっかけや実際の運用実態調査から明らかにし、現状の課題の整理と今後の立地規制方法の展望を考察することを目的とする。研究成果は以下の通りである。まず、条例等による用途に係る紛争への対応手法として、事前に個別用途を特定して協議の際の審査基準を設けておく「特定用途対応型」と、そうした事前明示基準のない中で当事者間の話し合いによる協議調整を重視した「協議調整対応型」の2タイプがあることが確認された。そして紛争の発生要因には、「葬儀場による用途影響への懸念」と「事業者対応への不信と反対運動・行政指導の限界」があることが明らかになった。また、実際の条例運用のケーススタディを通じて、協議調整の中で建物の規模や形態だけでなく管理運営に関する条件付けの議論も行われており、用途地域制が建物仕様の確認にとどまる点を十分補完していることが評価できた。ただ、条例等が立地の許可・不許可を扱えるツールでない点、また新しい用途の発生への柔軟な対応の必要性から、用途地域制そのものの修正も考えていく必要もある。