抄録
現在、米国の連邦政府によるホームレス政策は、連邦政府が地域コミュニティへ資金を助成し、各地域は支援活動を行いつつ連邦政府にデータを提出するという図式が一般的に確立されている 。通常、州政府はこのシステムに介在しないが、ワシントン州は、連邦政府のホームレス政策とは別に、地域コミュニティへの独自の助成金提供やデータ収集等の仕組みを有しており、州政府が大きく介入する独特な体制がとられている。そこで本論は、連邦政府と州政府という2層の政府によるホームレス政策が、ワシントン州においてどのような相互関係にあるか、また連邦政府の支援体系を既存のものと捉えるならば、州政府はいかなる戦略によりそれへの介入を行っているか、を明らかにすることを目的とし調査を行い、以下のことを明らかにした。州政府は連邦政府による既存のデータ収集体系を最大限活用し、サービス提供団体に負荷がかからない形で州のデータ収集体系を構築している。またその豊富なデータと独自資金を用い、連邦政府の助成金が行き届いていない地域や活動内容を把握し、自身の助成金プログラムを通して資源配分の調整を行っていた。