都市計画論文集
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東日本大震災で被災した学校施設における避難空間計画に関する研究
-現地再建した岩手県沿岸小中学校を対象として-
菊池 義浩南 正昭
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2015 年 50 巻 3 号 p. 416-422

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抄録

東日本大震災で津波被災した学校のうち、被災規模が小さかったところでは浸水した土地で再開している学校が少なくない。今後、災害が発生した場合に児童・生徒や教職員の安全を守れるよう、避難空間の再検討が課題になると考えられる。本研究は、緊急避難先の変更に着目してその状況と傾向を明らかにし、詳細な事例分析から場所・施設を設定した要因を探ると共に、避難空間の計画手法について考察した。岩手県沿岸部の小中学校を対象として、現地でのインタビュー調査および現地踏査を実施し、次のような結果を得ることができた。1)学校の位置、生徒数、被害程度から再建場所の選択傾向を確認した。また、現地再建した学校の多くで、発災後に緊急避難先を変更している状況を明らかにした。2)緊急避難先の変更過程について、各校が抱える課題に応じた多様なケースがみられた。分析的な考察からその変更要因を探り、多重型の避難計画がつくられるプロセスを捉えた。加えて、多主体連携による防災対策の具体例をみることができた。3)避難空間の計画要素を検討し、学校の安全性と教育環境の維持を踏まえた、円滑な避難を促せるような空間構造の仕組みについて考察した。

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© 2015 公益社団法人 日本都市計画学会
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