都市計画論文集
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神田川上流域における都市緑地の有する雨水浸透機能と内水氾濫抑制効果に関する研究
― 内外水複合氾濫モデルを用いたシミュレーション解析 ―
飯田 晶子大和 広明林 誠二石川 幹子
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2015 年 50 巻 3 号 p. 501-508

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抄録

近年、都市型集中豪雨に伴う内水氾濫が頻発している。従来の河川整備や下水道整備を中心とした治水計画には限界があり、雨水貯留浸透施設の設置や緑地の保全創出による流域対策を強化する必要性が高まっている。本研究は、流域スケールで都市緑地の有する雨水浸透機能と内水氾濫抑制効果を検証することを目的として、神田川上流域を対象に、緑地現況、緑地減少シナリオ、緑地創出シナリオの3事例を想定し、内外水複合氾濫モデルを用いたシミュレーション解析を行った。その結果、民有地の緑地を減少させたシナリオでは、約0.8倍の雨水浸透量の減少、1.2倍の浸水域の増大がみられ、民有地と公有地の双方の緑地を創出させたシナリオでは、約1.3倍の雨水浸透量の増加、0.7倍の浸水域の縮小がみられた。本研究により、都市緑地の保全創出は、雨水浸透機能の増大と内水氾濫の抑制に効果的であることを定量的に示すことができた。また、公有地の緑地だけでなく、民有地の緑地の保全創出が、流域対策上重要な役割を果たすことが明らかとなった。

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© 2015 公益社団法人 日本都市計画学会
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