本研究の目的は、千葉県印旛郡に位置し明治8年から昭和15年の間に開墾会社永沢社によって開発された八街開墾地の特質を地目と等級の観点から明らかにすることである。永沢社は、佐賀藩士によって明治維新後に武士の地位を失った人々に対する窮民授産のために設立された。本研究では、近年発見されたために今日まで学術的研究に用いられたことのない『明治三十二年 土地?帳 印旛郡八街村八街』(土地台帳)を資料として用いる。土地台帳より、当時の各敷地の状況を復元させた地図を作成し、明治政府によって定められた地目と等級と比較した。結果として、街道筋宿駅の短冊状の伝統的地割りを踏襲して開発されたこと、明治半ばの鉄道開発が土地の等級付けにも影響したと考えられることなどが明らかになった。