抄録
本研究は転換期にある繊維問屋街について、空間変容と再生の取り組み、それらの関係を明らかにすることを目的とする。東京東神田・馬喰町地区では空き物件を利用したアートイベント「CET」の取り組み、名古屋錦二丁目地区では産官学民連携のまちづくりやリノベーション事業の展開など、近年、大規模再開発に依らない地区再生の取り組みが注目されてきた。いずれの地区においても、1990年代後半から2000年代前半にかけて、非住宅系用途の建物を中心とする建替えの停滞や空き地の増加など地区の空洞化が見られ、その時期から地区再生の取り組みが開始された。東神田・馬喰町地区のCET の取り組みは、集合住宅の活発な供給やリノベーションの展開などを経て2010 年に終了した。錦二丁目地区の取り組みは、空き地の更なる増加が見られる中で公共空間や空地を活用した活動へ展開されるようになってきた。