都市計画論文集
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社会受容性の高いLRT計画立案に関する一考察
欧州14都市実態調査から導かれること
ペリー 史子塚本 直幸
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ジャーナル オープンアクセス

2020 年 55 巻 3 号 p. 1233-1240

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抄録

日本の多くのまちでLRT(Light Rail Transit)と呼ばれる次世代型路面電車システムの計画、構想があるが、なかなか実現してこない。そこで、トラム整備に成功した欧州の事例における整備計画内容の構成について、現地調査と交通計画担当者へのヒアリング結果から分析した。これらから、社会的に受容されるLRT計画立案を進めるためには、地球環境にまで配慮した都市全体の大きな枠組みの中でのLRT計画の明確な位置づけ、市民にわかりやすく目に見える形で伝わること、整備効果の測定には交通分野以外の都市環境や生活の質に関わる評価軸が必要であること等を導き出すことができた。制度や財源については、日本とは異なる仕組みを持っているが、都市の将来ビジョンに則って市民に様々な情報公開をしてきている点には、学ぶべきところも多い。日本で社会的に受容されるためには、交通計画の枠ではなく市民の生活空間の質の向上や都市の将来像の中での明確な位置づけに基づいてLRTプロジェクトを計画し、整備効果についても交通以外の多面的な側面から測定することが重要であり、そうすることによって、より豊かな質の高い生活環境構築を目指したLRT計画が実を結んでいくと考えられる。

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