日本土木史研究発表会論文集
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江戸水道の基礎的研究その1
『上水記』にみる江戸水道の構造と機能
神吉 和夫渡部 恒雄
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キーワード: 江戸, 上水道, 上水記
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1988 年 8 巻 p. 274-281

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抄録

本稿では、江戸水道の構造と機能を明らかにするため、江戸幕府普請奉行上水方道方の石野遠江守広通が1791 (寛政3) 年に完成させた「上水記」記載の玉川・神田両上水の江戸市中暗渠配管を基礎資料に両上水の構造を調べ、また水工条件を仮定して暗渠配管網の流量計算を試みた。
暗渠は樋筋と記され、石樋 (万年石樋) と木樋があり、石樋は神田上水では水戸屋敷からお茶ノ水懸樋を経て常盤橋まで、玉川上水では四谷大木戸から赤坂溜池出口の区間と吹上懸りの樋筋で、他は木樋である。樋筋は幹線と思われる部分のみ示され、途中に玉川上水で454ヶ所、神田上水で142ヶ所桝がある。その内、水見桝が玉川上水で8ヶ所あり、江戸城・重要武家等への水の流れの監視に使われた。また、吐樋が22ヶ所あるが、その内堀へ10ヶ所、溝へは12ヶ所 (内9ヶ所は近くに堀がある) 排水される。流量計算の結果、石樋のすべておよび木樋の一部は開水路流れ、末端に近い方で管水路流れとなった。流量の多くは江戸城、武家屋敷に配分され、水道が武家の為のものであったと思われる。(江戸、上水道、「上水記」)

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