1992 年 12 巻 p. 167-174
著者らは第9, 10, 11回土木史研究発表会で, 攻玉社 (工学校) を中心として明治期の土木教育と測量教育等について断片的に発表した[文献1, 2, 3]。今回の論文では, 攻玉社に残存する史料その他国会図書館等の史料により, 明治期に測量用語が, どのように英語から発音され, また訳されたかを調べた。明治期の測量方法は従来の江戸時代の「測量術」から, 次第に経緯儀等の新しい測量器械による欧米流の「測量学」的の手法に転換して行った。この新しい測量方法によって, 道路, 鉄道, 港湾, 電信等が建設され, 当時の国是であった「富国強兵」「殖産興業」のための社会基盤が充実された。
欧米の測量書は, 数学者や土木関係者によって訳されたが, その訳語は各人各様で, 統一の必要も考えられたが, 結局, 明治期には実現しなかった。
攻玉社における測量用語の訳語は, 比較的早い時期の訳としては的確で, 発音も正しかったと考えられる。
この論文では, 参考のため江戸時代の測量術についても簡単に説明し, また, 明治6年 (1873) の地租改正による全国の土地の面積の丈量 (測定) が行われたのに伴い, 地方で刊行された測量教科書にも訳語が広がっている例も示した。
当時の陸海軍の測量はそれぞれ独自の発達を遂げたが, 調べなかった[文献2]。