土木史研究
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西ヨーロッパにおける運河のリフトとインクラインの変遷について
長野 正孝
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1993 年 13 巻 p. 17-31

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抄録

本論は、リフトやインクラインが、近代閘門式運河の発展史との関わりにおいて、いかなる技術発展の過程を辿り、どのようにヨーロッパの運河網の発展に寄与していったかを分析、評価するものである。
最初に、中世の黎明期において、閘門式運河とインクラインの技術が誕生した経緯を考察した。第二に、産業革命の初期の時代に、水資源保護という観点から、運河網を形成するシステム技術の一つとして、インクラインの技術が普及していった背景と要因を明らかにした。第三に、19世紀末から20世紀前半にかけて、ドイツなどで鉄道との競合の中で、輸送力向上、水資源保護の観点から、リフトが節水槽付き間門とともに定着し、発展していった過程とその要因を明らかにした。第四に、戦後のヨーロッパの国際運河網の形成のために、リフト、インクラインの技術は、不可欠なものになり、閘門とは20~30mの水位差を境に棲み分けが行われ始めたことを明らかにした。最後に、これらの技術のさらなる発展の可能性を概観するとともに、これらの技術を我が国に適用した場合の可能性について示唆した。

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