土木史研究
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猪苗代湖疏水 (安積疏水) の建設に活躍した南一郎平について
南は事務官であり技術者ではなかった
藤田 龍之
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キーワード: 人物史, 疏水, 鉄道
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1993 年 13 巻 p. 355-361

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抄録
猪苗代湖疏水工事において内務省の役人として、奈良原繁と共に活躍した南一郎平は、安積疏水の歴史を述べる人々のなかでは、主任技術者として高く評価されている。これは、彼が大分県の広瀬井手工事の成果により松方正義に見いだされ、その経験を買われて猪苗代湖疏水工事に政府派遣の役人として全工事の指揮をとったことににより、技術者として見なされたことにあるらしい。しかし、彼が広瀬井手で最もその手腕を発揮したのは金集め、つまり建設資金の手当である。また、工事そのものは彼が集めた技能集団が行い、従って、南一郎平が技術者として広瀬井手工事にたずさわったという記録は見あたらない。そこで、南一郎平の事績を調べ、彼が文官として業績を上げたが、「技術」に関しては、多少経験土木としての素養はあったものの、山田寅吉、古市公威などのように近代土木を身につけた技術者ではなく、したがって、これまでいわれているような猪苗代湖疏水の測量や設計に直接技術者として参画したことがなかったことを明らかにした。
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