抄録
近年、わが国に河川工事において、自然を壊すことのない工事が要求されるようになってきた。いわゆる「多自然型川づくり」である。この、「川づくり」の中で最も重要な治水について、その思想的背景はどのようなものであったかについて考察を試みた。中国において国造りの基本は「治水」であると言われているが、その伝説的な人物として「禹」が上げられている。禹は夏王朝の祖と言われているが、その存在は明らかにされてはいない。しかし、「書経」を始め「孔子」、「孟子」など多くの歴史書、思想書に「禹」が取り上げられている。そこで種々の文献を引用し中国古代の思想家が「禹」をどのように評価し、また治水、土木をどのように考えていたのかについて検討を試みた。