1996 年 13 巻 p. 161-172
鉄道の都市形成力に多くを依存しながら、比類なき巨大都市にまで至った東京。この成長と弊害の歴史を乗り越えていくには、まず東京における都市と鉄道の歴史的特質を知ることが不可欠であろう。本研究では、それを考察する上で示唆を含んでいると思われる、パリの都市と鉄道の歴史を、都市構造・景観に注目して分析している。そして、パリでは鉄道を原動力とした近代都市建設の是非をめぐる、確執と葛藤 (国と市、伝統と近代、芸術性と機能性) を孕んだ数々の論争・試行錯誤の末、鉄道整備が都市のアンデンティティの中にその計画の拠り所を見出し、都市整備との相補的関係を構築していったことを示した。