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清水 英範, 布施 孝志
2010 年 27 巻 p.
1-18
発行日: 2010年
公開日: 2017/11/29
ジャーナル
フリー
広重や北斎などの江戸の風景画には、富士山や江戸湾などの地形や江戸城の眺望を巧みに取り入れた素晴らしい都市景観が数多く描かれている。しかし、これらの風景画の多くは名所絵であり、江戸の都市景観の実態は明らかにされていない。本研究では、江戸絵図を基礎資料とし、その幾何学的な歪みを補正し、明治時代の東京の地形データと現代の広域地形データを統合し、江戸市中や江戸城の建造物について高さを中心としたモデリングを行い、江戸の都市景観を再現した。主に、富士山や筑波山、江戸湾、江戸城などの眺望景観の再現結果に対して、風景画などとの比較を通し、その解釈を与えることにより、江戸の都市景観の実態を紐解くことを試みた。
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柳原 崇男
2010 年 27 巻 p.
19-31
発行日: 2010年
公開日: 2017/11/29
ジャーナル
フリー
本稿は、視覚障害者の視覚認知・空間認知と歩行支援整備に関し、既往研究をレビューし、今後の歩行支援整備のアプローチについて考察したものである。まず、ロービジョン者の視覚機能が歩行に与える影響について、既往研究をまとめ、視覚機能測定などの医学分野との連携が必要であることを指摘した。次に、全盲者の空間認知能力と歩行の関係について既往研究をまとめ、空間認知能力と歩行能力との関係を明らかにした。そして、今後の視覚障害者のための歩行支援整備のについて、科学的根拠に基づいたアプローチの重要性を指摘した。
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石倉 智樹
2010 年 27 巻 p.
33-40
発行日: 2010年
公開日: 2017/11/29
ジャーナル
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インフラのストックの蓄積に伴い,維持管理費や老朽化したストックの更新などのインフラ管理費用が増大することが予想されており,今後はその長期的計画が重要となる.本研究は,長期的な視点からインフラの戦略的な維持管理・更新政策への示唆を得るため,維持管理によるインフラストックの劣化・滅失の制御を考慮した,基礎的な動学的経済モデルを構築した.さらに,仮想経済を対象としたシミュレーション分析により,インフラの維持管理技術の変化や,インフラストックの生産性の変化が,最適成長のためのインフラ投資・維持管理政策に及ぼす影響について,感度分析を行った.
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加藤 裕人, 宮城 俊彦, 仲原 由布子
2010 年 27 巻 p.
41-48
発行日: 2010年
公開日: 2017/11/29
ジャーナル
フリー
本稿では,社会資本が経済成長に与える影響を分析するために,両者の因果構造を把握することができるモデルを提案する.ここでは動学的マクロ経済モデルであるReal Business Cycle(RBC)モデルを基礎として,人的資本の導入や「分割できない労働」を仮定したモデルを構築し,時系列データを用いて構造パラメータの推定を行う.その際,VARを内包するように経済成長モデルを状態空間表現し,社会資本の生産弾力性を計測する.また,インパルスレスポンスやトレンドブレイクに対するモデルの反応分析を行う.
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佐藤 徹治, 伊藤 貴大
2010 年 27 巻 p.
49-54
発行日: 2010年
公開日: 2017/11/29
ジャーナル
フリー
本稿では、我が国で近年増加傾向にある限界集落に着目し、地域内および地域間インフラの維持管理・更新費用と当該地域からの全住民の移住に関わる費用等の大小関係から各インフラの維持管理・更新の妥当性、当該地域からの移住の妥当性を評価可能な手法を提案し、千葉県南部の2つの実際の限界集落を対象とする実証分析を行った。実証分析の結果、転居費用等の一時的費用や心理的負担等の永続的な非金銭的費用が永続的な金銭的費用を大きく下回ることを明らかにするとともに、評価手法の適用にあたって不可欠な移住費用およびインフラの維持管理・更新費用の算定方法を示すことができた。
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柿本 竜治, 川越 保徳, 岩佐 康弘
2010 年 27 巻 p.
55-64
発行日: 2010年
公開日: 2017/11/29
ジャーナル
フリー
本研究では,MM手法のフレームを援用し,水道水の水質や飲用方法に関する情報提供が熊本市民の水道水の味の評価の改善に有効であるかを検証した.第一段階として,事前アンケート調査で水道水の飲用状況,味の評価や意識等を把握した.第二段階として,水道水に関する情報提供を行い学習促進のコミュニケーションを行った.第3段階として事後アンケート調査,および長期事後アンケート調査を行った.その結果,学習の程度と水道水の評価に対する意識変化に関係があることが分った.また,実際に水道水をおいしく飲む工夫を実践したグループでは,その学習効果が長期的に持続していることが明らかになった.
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藤見 俊夫, 柿本 竜治, 山田 文彦, 廣瀬 健康
2010 年 27 巻 p.
65-70
発行日: 2010年
公開日: 2017/11/29
ジャーナル
フリー
本研究では,熊本市坪井川遊水地周辺地域を対象として,水害リスクカーブの時系列変化を検証することで,水害リスクが低頻度大規模型へと変化していることを明らかにした.また,その原因として,遊水地整備により高頻度小・中被害の水害リスクが低下したことから,潜在的な浸水危険地域に住宅の立地が進み,低頻度大被害型の水害リスクへの変化したことが推察された.
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門間 俊幸, 中村 卓雄, 小池 淳司, 藤井 聡
2010 年 27 巻 p.
71-80
発行日: 2010年
公開日: 2017/11/29
ジャーナル
フリー
社会資本整備において、効率性と公平性は常にトレードオフの問題として現れる。公平の原理は、社会心理学では、equity(衡平性)、equality(平等性)、need(必要性)の3つの原理と定義されてきたが、これまでの地域間公平性の議論は、equityとequalityの議論に偏っていたものと考えられる。しかし、社会資本整備の格差問題は、分配的公正原理の一つであるneedの問題として捉えることも可能である。また、主体については「個人」の議論がほとんどであり、「地域」を主体とした論点は理論的には十分に正当化されていたとは言い難い。しかし、現実の人々は、社会資本の地域間格差問題を「地域を主体とした問題」と捉えている可能性も考えられる。本研究では、以上の可能性を確認するための全国アンケート調査を行い、それぞれの可能性を支持する実証分析結果を得た。
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山本 幸, 山田 文彦, 柿本 竜治, 田中 健路, 藤見 俊夫
2010 年 27 巻 p.
81-90
発行日: 2010年
公開日: 2017/11/29
ジャーナル
フリー
本研究では、熊本市壺川校区をケーススタディとしたリスクコミュニケーションの実施を通して把握された地域の防災ニーズとそれに対応して開発した支援システムについて考察する.特に、本支援システムの地域内での実効性を高め、他地域へも展開可能な統合化システムとして確立を目指すために、要援護者の個別支援プラン作成と連動した地域展開の取り組み、およびその実効性・有効性の検証のために実施した避難行動訓練について説明し、提案した支援システムの有効性を示すとともに、他地域への展開が可能な統合化システムとしての今後の課題について考察を行なった.
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及川 康, 片田 敏孝
2010 年 27 巻 p.
91-97
発行日: 2010年
公開日: 2017/11/29
ジャーナル
フリー
住民避難誘導を目的とした標識のデザインが不適切な場合、それは時として人的被害の拡大にも繋がりかねない。このことから、避難誘導のための標識デザインは、その意図とするメッセージが対象者に確実に伝わるよう検討される必要がある。しかし、現行で考案されている避難に関する標識は、その意図が正確に伝わりにくいにとどまらず、むしろ逆の意として理解される可能性すら存在することが考察された。このような現状に対して、避難誘導効果の向上のための標識デザインの方針として重要となり得るポイントについて整理・検証を行った。
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Nursyamsu HIDAYAT, Kasem CHOOCHARUKUL, Kunihiro KISHI
2010 年 27 巻 p.
99-108
発行日: 2010年
公開日: 2017/11/29
ジャーナル
フリー
In this paper, the structural relationships among pedestrian perceptions, behavior, traffic, and level of service are investigated using a structural equation model. Observation was conducted at the sidewalk with vendors activities. The main research results are as follows: pedestrian behavior/attitude has a positive direct effect on perception and traffic, and a negative direct effect on level of service. Pedestrian traffic has a positive direct effect on perception and level of service. Pedestrian perception has a positive direct effect on level of service. Finally, this research indicates that pedestrian traffic is the most important factor for pedestrian level of service.
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高山 雄貴, 赤松 隆
2010 年 27 巻 p.
109-120
発行日: 2010年
公開日: 2017/11/29
ジャーナル
フリー
本研究では,新経済地理学分野で開発されたCore-Periphery(CP)モデルを2元多都市システムの枠組みに拡張し,安定的な均衡解として創発する集積パターンを理論的に明らかにする.そのために,Akamatsu et al.(2009)による1次元多都市CPモデルの分岐解析手法を拡張し,2次元CPモデルの解析を行う.その結果,Loöschの中心地理論で示された,市場圏が六角形状になるように都市が配置される集積パターンが安定均衡解として創発することが明らかにされる.
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織田澤 利守, 西山 秀紀
2010 年 27 巻 p.
121-129
発行日: 2010年
公開日: 2017/11/29
ジャーナル
フリー
本論文では,都市集積.分散モデルの均衡選択問題に対して,確率論的な均衡概念を導入することによって,長期的に実現する均衡を確率的に予測できる枠組みを提案する.具体的には,労働者の地域に対する選好の異質性,およびその確率動学的なゆらぎを明示的に考慮した完全予見的ダイナミクスを定式化し,長期的な均衡解が平均値ダイナミクスの停留点周りに実現する確率分布として表現されることを示す.その上で,複数均衡が存在する際の均衡選択確率を導出する.さらに,本研究では,このような枠組みにおける都市集積・分散ダイナミクスの特性を明らかにする.
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大島 英幹, 古谷 知之, 福井 弘道
2010 年 27 巻 p.
131-136
発行日: 2010年
公開日: 2017/11/29
ジャーナル
フリー
本研究では,インドシナ諸国でのアジアンハイウェイの整備・利用促進施策の実施により,現在インドシナ諸国間で海路で輸送されている,商品単価の安い貨物の一定割合が,アジアンハイウェイを利用した陸路輸送に転換する場合の,GRDPと炭素排出による負の便益の増加を,空間計量経済モデルを用いて推計した.この結果,海路輸送から陸路輸送に転換することで,GRDPを最も大きく増加できる区間は,ベトナム~タイということ,どの区間も,沿道国以外の近隣地域でもGRDPが増加していることが明らかになった.また,炭素排出による負の便益の増加は,どの区間でも,GRDPの増加額と比べると微小な値となった.
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石 磊, 宮尾 泰助, 小林 潔司
2010 年 27 巻 p.
137-146
発行日: 2010年
公開日: 2017/11/29
ジャーナル
フリー
本研究では,開発途上国における建設プロジェクト契約の実施段階に着目し,発注機関と受注者の間において贈収賄に代表される不正行為が発生するメカニズムをゲーム理論を用いてモデル化する.その際,権限者と担当者で構成される発注機関の内部組織構造として集権的組織・分権的組織構造を想定し,異なる組織環境の下で発生する不正行為に対する抑止政策の効果について分析する.集権的組織における不正行為では,発注機関内の権限者に対する外的ペナルティの存在がペナルティ抑止効果をもつことが判明した.一方,分権的組織では,権限者による内部ペナルティが必ずしも有効ではなく,権限者の監督責任に対する外部ペナルティ制度が必要となるが,より小さなペナルティにより不正行為を抑制することが可能であることが明らかとなった.
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栗原 剛, 岡本 直久
2010 年 27 巻 p.
147-155
発行日: 2010年
公開日: 2017/11/29
ジャーナル
フリー
本研究では、インバウンド需要予測手法の精緻化およびインバウンド政策の評価手法確立を目指し、インバウンド需要に影響を与える政策および外的要因の分析を行った。インバウンド需要予測は旅行発生量、分布の2段階から構成される手法を用い、影響要因には海外旅行自由化および経済成長、査証規制緩和、自然災害等を挙げた。海外旅行自由化や経済成長の影響を反映したロジットモデルでそれぞれ旅行発生量が増加することが示されたほか、査証規制の緩和を旅行分布モデルに導入し、訪日中国人旅行者に対して査証免除政策を行ったときの効果が定量的に表現できることが示された。
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喜多 秀行, 河内 朗
2010 年 27 巻 p.
157-163
発行日: 2010年
公開日: 2017/11/29
ジャーナル
フリー
これまでの研究で、ドライバーは時々刻々と変化する交通状況の中で、効用最大化理論に基づいた運転行動を選択しているとの仮定のもと、ドライバーが選択した運転行動の効用から、交通サービスの質を推定する瞬間効用モデルを提示してきたが、大型車の影響を取り込むことが課題となっていた。そこで、本研究では、大型車の交通状況を取り込むことを目的として走行実験を実施し、そこで収集したデータから自車周辺に存在する大型車が、ドライバーが認識する交通サービスの質に対して影響を与えることを示した。さらに、それをドライバーの危険感として反映させた瞬間効用モデルを新たに提示した。
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日下部 貴彦, 南 善樹, 朝倉 康夫
2010 年 27 巻 p.
165-172
発行日: 2010年
公開日: 2017/11/29
ジャーナル
フリー
本研究で開発した「Cell Emission Approach」による排出量推定手法は,高速道路上に設置された車両検知器によって観測された交通量及び速度データから時々刻々と変動する交通流に応じた二酸化炭素排出量を高速道路上の区間毎に算出するものである.推定方法では,同時刻法とタイムスライス法の二種類の方法を構築した.分析では,阪神高速道路で観測された5年間半分の検知器によるデータを用いて路線毎の二酸化炭素排出量を推定した.分析では,同時刻法とタイムスライス法による推定結果の比較し,それらの方法の特性を確認した.また,推定結果を可視化し,区間毎の交通量・速度等の交通流指標と比較し考察を行った.
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吉野 大介, 藤原 章正, 張 峻屹
2010 年 27 巻 p.
173-180
発行日: 2010年
公開日: 2017/11/29
ジャーナル
フリー
先進国・途上国ともに持続可能性の観点から環境負荷削減とモビリティの維持向上の両立が求められる中,本研究ではWBCSDが提案したEco-efficiencyを応用して都市交通システムの環境効率性評価モデルの構築を行う.構築するモデルはDEA(データ包絡分析法)を基本としており,都市交通システムの多様性をモデル内で考慮することができる点が特徴的である.また,モデル内で公共交通依存型都市,私的交通依存型都市,私的・公共交通調和型都市別にベンチマークを設定することで,算出される評価指標に実効性を持たせることを可能とした.
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室井 寿明, 森地 茂
2010 年 27 巻 p.
181-192
発行日: 2010年
公開日: 2017/11/29
ジャーナル
フリー
都市において大震災が発生した場合,複数の都市鉄道路線で復旧に数ヶ月もの期間を要する恐れがあり,鉄道の長期途絶が経済社会活動の停滞に与える影響は極めて大きく,代替交通手段の確保が必要である.そこで本研究では,鉄道が復旧するまでの交通機関として代行バスに着目した.まず,阪神・淡路大震災時の代行バスの成果と課題を整理し,その技術的・制度的工夫および成果と課題について把握し,震災時の都市鉄道の効果的な代行バスの運行に資するための提案を試みた.
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佐々木 和寛, 奥村 誠, 大窪 和明
2010 年 27 巻 p.
193-200
発行日: 2010年
公開日: 2017/11/29
ジャーナル
フリー
大規模地震発生時には広域で同時多発的に発生する重傷者を迅速に搬送し治療することが重要となるが,高速道路は地震発生直後に道路点検の実施により通行止めになるため重傷者搬送に利用できないのが現状である.そこで,本論文では,高速道路の点検体制を所与と仮定し,高速道路の開放時間を外生的に与えた上で,その時間以降に高速道路が通行可能となるという制約を考慮した一般道路と医療施設の耐震化計画問題を提案する.本稿のモデルを小規模なネットワークに適用した結果,高速道路の開放時間の短縮により,一般道路の耐震化が不要になり,その費用を医療施設の耐震化に回したり削減したりできる可能性を確認できた.
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福田 正輝, 高山 純一, 中山 晶一朗
2010 年 27 巻 p.
201-207
発行日: 2010年
公開日: 2017/11/29
ジャーナル
フリー
近年,救急搬送や救急医療活動においては,全国的な医師不足や救急搬送患者の受け入れ拒否件数の増加,消防署から救急要請場所までの現場到着時間の増加など,多くの問題を抱えている.本研究では,プレホスピタルケア(病院前救護)の充実が患者の救命率や入院後の回復率(予後)に大きく影響することを踏まえて導入が検討されている医療情報デジタル伝送システム運用のためのアンテナ基地局モデルを構築し,石川県小松市において本モデルを適用した.また,本システム導入による人的損失額を算出することにより,システムの有効性を示した.
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松村 暢彦, 松浦 洋平
2010 年 27 巻 p.
209-218
発行日: 2010年
公開日: 2017/11/29
ジャーナル
フリー
持続可能な地域づくりにおいては,行政セクター,民間セクター,市民セクターの複合的なセクター間が連携,協働するマルチパートナーシップ型組織による交通まちづくりが必要とされている.そこで本研究では,ひらかた環境ネットワーク会議を中心としたマルチパートナーシップ型組織のよるバスタウンマップの作成とバスのってスタンプラリーの実施を中心とした交通まちづくり事例をケーススタディとしてその組織の構築プロセスを通して,各主体の役割を明らかにした.その結果,主体の役割分担が明確になっていることと地域の組織を巻き込んだイベントを行うことによって主体間の連携をうみだし,まちづくり主体の連携を促進することがわかった.
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阿部 正太朗, 近藤 光男, 近藤 明子
2010 年 27 巻 p.
219-230
発行日: 2010年
公開日: 2017/11/29
ジャーナル
フリー
現在,わが国の地方圏は人口の減少が深刻な問題となっている.その一方で,都市圏から地方圏への人口移動が地域の活性化に資するとして注目されている.今後,地方圏では転入者を対象とした施策を講じることによって,UIJターン人口移動を促進させることは注目すべき施策である.そこで本研究は,徳島県を除く全国都道府県の都市部から徳島県地方部への人口移動を対象とした人口移動モデルを構築することによって,転入受け入れ体制がUIJターン人口移動に及ぼす影響を明らかにした.また,転入者へのアンケート調査から,UIJターン人口移動の移動要因を解明し,今後のUIJターン人口移動促進施策について,その方向性を示した.
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片岸 将広, 川上 光彦, 小柳 琢利, 埒 正浩
2010 年 27 巻 p.
231-238
発行日: 2010年
公開日: 2017/11/29
ジャーナル
フリー
本研究では、地方都市圏を対象とした人口変動等の分析から、これまでの都市計画制度下において、都市圏レベルで市街地の拡散が進行し、当初は都市的開発を想定していなかった非線引き都市の人口増加率が高くなっていることを示した。また、富山都市圏の事例分析を通じて、線引きが設定された中心都市に隣接あるいは連接する非線引き白地地域において開発が進み、一方の市街化区域や用途地域内では低未利用地が多く残存している実態等を明らかにした。さらに、上記の分析結果を踏まえ、地方都市圏の土地利用ゾーニングのあり方について考察した。
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山崎 俊夫, 秀島 栄三
2010 年 27 巻 p.
239-247
発行日: 2010年
公開日: 2017/11/29
ジャーナル
フリー
昔ながらの町並みがマンション等の新しい空間利用により更新されつつある.木造家屋が多く残る旧来の市街地を対象として,仮想敷地に建物模型を製作する実験を行った.相隣環境を示す写真や模型から空間利用に対する規範を読みとっている様子が,建物模型の製作過程からうかがえる.しかし,既存の建物との統一的な町並み形成を行おうとする意識は,製作された模型からは見られない.かつての空間利用に対する規範は現代における空間利用と必ずしも一致しないが,空間利用に対する規範が近隣と調和する建築活動をある程度は誘導することが示された.
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田口 秀男, 木村 一裕, 日野 智
2010 年 27 巻 p.
249-256
発行日: 2010年
公開日: 2017/11/29
ジャーナル
フリー
本論文では,地域活性化の担い手と期待される観光ボランティアガイドが来訪者に対話型の情報提供を行う意義を明らかにすることを目的に,ガイドを利用したことのある全国の不特定の観光客にWeb調査を実施したほか,その結果に基づき,全国の観光ボランティアガイド団体側の取り組みや課題認識を把握した。その結果,多様なガイドの形態や活動状況を分類したほか,観光ボランティアガイドによる対話型情報提供の意義は,来訪者に交流を通じ地域の理解を深めてもらうとともに,ガイド参加者に達成感を与え住民活動を活性化させることにあり,人員不足などの課題解決のため他団体との連携を図ることが重要であることを明らかにした。
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牧 浩太郎, 高見 淳史, 大森 宣暁, 原田 昇
2010 年 27 巻 p.
257-264
発行日: 2010年
公開日: 2017/11/29
ジャーナル
フリー
本研究では、地震に関する防災性の指標である地域危険度を用いた地価関数を推定するとともに、防災性に関する各指標により地域危険度を説明する関数を推定した。住宅地および商業地に関する地価関数の推定より、防災性が地価に帰着し、さらに地域危険度を用いた場合に自由度調整済み決定係数が最大となることを確認した。また、地域危険度を説明する関数より、道路率、空地率、建ぺい率および不燃化率と、危険度の各ランクとの間の関係を確認した。これらの両関数を用いることで、道路率、空地率、建ぺい率および不燃化率を用いて、都市基盤整備に伴う防災性の向上による便益の計測が可能となった。
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宮田 将門, 戸上 昭司, 加藤 博和, 川瀬 康博, 林 良嗣
2010 年 27 巻 p.
265-272
発行日: 2010年
公開日: 2017/11/29
ジャーナル
フリー
日本の中山間地域は、都市地域からの支援なくして持続不可能である一方、急激な人口減少および少子高齢化によってそれが困難である。地域の必要性・存在意義や維持発展のあり方を再検討し、新たな施策を実施することが必要となっている。このような中山間地域について、衰退過程および現状を捉える枠組みとして、地域が有するストックとそれに伴い発生するインフロー・アウトフローとの関係を表現する方法を提案する。再生を果たした中山間集落でフィールドワークを行い、ストック利用によるフローの変遷を把握することにより、限界集落であってもストックを活かすことで、持続可能な状態になり得ることを示している。
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青木 達也, 永井 護
2010 年 27 巻 p.
273-284
発行日: 2010年
公開日: 2017/11/29
ジャーナル
フリー
本研究では、廃水処理対策に関し、第五回予防命令までの経緯、水処理のネットワークおよび浄水施設の変遷、その後の水処理系統の変遷、施設の配置、選鉱技術と関連、他鉱山の廃水処理施設との比較、水質の変化等について整理を行った。その結果、廃水処理対策の柱は、沈澱池、濾過池、乾泥池を主要な施設とする浄水場の整備と、鉱毒水の排出口となる坑口、選鉱場、堆積場などの鉱山施設とそれら浄水場を結ぶネットワークの形成であったこと、浄水場は生産拠点である本山、小滝、通洞の時代ごとの変化に対応して変容していたこと、浄水場の各池の配置は処理作業上の流れを考慮したものであったこと、などの特徴を有していることが確認できた。
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高山 雄貴, 赤松 隆
2010 年 27 巻 p.
285-295
発行日: 2010年
公開日: 2017/11/29
ジャーナル
フリー
本研究の目的は,都市内の産業立地パターンが階層化されるメカニズムを明らかにすることである.そのために,高山・赤松(2010)により提案された,空間競争を考慮したSocial Interaction(SISC)モデルを多産業の枠組みに拡張する.そして,高山・赤松による分岐解析手法を応用することで,多産業SISCモデルで創発する均衡立地パターンを示す.その結果から,産業間の相互作用が非対称であれば,産業構造が階層化し得ることが明らかにされる.
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福本 潤也, 岡本 佳洋
2010 年 27 巻 p.
297-304
発行日: 2010年
公開日: 2017/11/29
ジャーナル
フリー
地方分権の進展が地方自治体のイノベーションにもたらす影響について,イノベーションを加速するという主張とイノベーションを抑制するという主張の両方がある.実証分析の蓄積が乏しいこともあり,論争の決着は付いていない.本研究では構造改革特別区域制度における規制の特例措置の提案を規制改革のイノベーションと捉え,特区の認定をイノベーションの波及と捉える.利用実績のデータベースに対してロジスティック回帰分析とクロス集計分析を適用し,特区制度の利用実績の実証的な特性を明らかにする.分析結果として,規制改革のイノベーションは人口規模の多い市町村で生起する傾向があり,イノベーションが人口規模の多い市町村や財政状況の悪い市町村に波及する傾向があることを明らかにする.
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小瀬木 祐二, 戸川 卓哉, 鈴木 祐大, 加藤 博和, 林 良嗣
2010 年 27 巻 p.
305-312
発行日: 2010年
公開日: 2017/11/29
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フリー
大都市圏における都市コンパクト化施策検討の基礎的情報となるインフラ維持管理・更新費用を大都市圏スケールで推計する手法を構築する。名古屋都市圏をケーススタディとして基礎的分析を行った結果、名古屋市内では夜間人口あたりインフラ維持費用が抑えられる一方、周辺市町村の郊外部では非常に高い傾向となっていること、市街化調整区域内では夜間人口あたり費用が高くなっていること等が示されている。また、夜間人口あたり費用の高い地区から、建て替えのペースに合わせて撤退を行った場合、費用削減効果が顕在化するまでには数十年の時間を要することが分かった。
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濱名 智, 中川 大, 松中 亮冶, 大庭 哲治
2010 年 27 巻 p.
313-321
発行日: 2010年
公開日: 2017/11/29
ジャーナル
フリー
本研究では、京都市内の86商店街を対象とした現地調査により算出した歩行者密度を賑わいの指標として定義した。その上で、歩行者密度と小売業年間販売額を賑わいの指標として用い、歩行者空間の整備状況と商店街の賑わいの関連性を定量的に明らかにした。
その結果、歩行者空間の整備状況は、従来から商店街の賑わいの要因として用いられてきた商店街へのアクセス性や売場面積・店舗密度といった商店街の特性を現す変数と比較しても、同等あるいはそれ以上の関連がみられることを明らかにした。
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畑山 満則, 湯川 誠太郎, 枝廣 篤, 多々納 裕一
2010 年 27 巻 p.
323-330
発行日: 2010年
公開日: 2017/11/29
ジャーナル
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滋賀県湖北地区に位置する姉川・高時川流域は、地形の影響で豪雨時の氾濫流が大きく河川改修のみでは水害を避けることができないと想定される場所があり、市町界を越えた避難を念頭に入れた避難計画を検討する必要がある。本研究では、両川の合流地点に位置する虎姫町での避難計画検討の過程から、広域避難計画作成を支援する情報システムの構築を目的とする。まず、虎姫町民の水害リスクの認知、水害時の避難行動、広域避難に対する意識と平常時の生活行動についてアンケート調査を行う。この分析結果をもとに、マルチエージェントシミュレーション手法を用いた水害避難評価ツールを構築し、広域避難を含めた様々な避難計画に関して考察を行う。
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吾郷 太寿, 松永 千晶, 角 知憲
2010 年 27 巻 p.
331-336
発行日: 2010年
公開日: 2017/11/29
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本研究は,防犯環境設計に基づいた安全・安心な通学路設計のための定量的な知見を得ることを目的とし,児童の交通量,児童以外の交通量および沿道状況や路上設置物などの物理的な道路空間を構成する要素と不審者出没との関係を分析する.児童を対象とした犯罪の多くが下校時の通学路上で発生する機会犯罪であるという前提と,道路交通に関する物的空間構成要素が不審者出没に影響を与えているという仮説に基づき,児童の存在密度を用いた不審者出没モデルを作成し,そのモデルから得られた結果より判別分析をおこなう地点を定めた.福岡市内5校区を対象とした判別分析の結果,静的・動的監視性に関する空間構成要素が不審者出没に与える影響度を定量的に表現できた.
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佐々木 邦明, 望月 裕子, 鈴木 猛康, 秦 康範
2010 年 27 巻 p.
337-343
発行日: 2010年
公開日: 2017/11/29
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本研究は,水害を対象として行動プラン作成を依頼することが,実際に水害に備える行動の実行や水害に対する意識にどのように影響を及ぼすのかを測定することを目的としている.事例研究として山梨県内の新興住宅街を対象として行動プランの作成依頼を行い,事前・事後調査から行動の変化と意識の変化を測定した.その結果,緊急連絡先の確認や非常持ち出し品の準備等の比較的実行が容易なものについては統計的に有意な効果を示した.また,災害に対する意識についても統計的に有意な差が見られるものがあり,いずれも行動プランを配布した地域では望ましい方向になっていた.これらの結果からハザードマップ等にあわせて行動プラン作成用紙を配布し,プラン作成を依頼することが比較的容易な行動や意識に効果があると確認された.
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牧野 夏樹, 中川 大, 松中 亮治, 大庭 哲治
2010 年 27 巻 p.
345-353
発行日: 2010年
公開日: 2017/11/29
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近年、モータリゼーションの進展に起因する様々な都市問題への対策としてコンパクトシティの考え方が注目されており、大小様々な都市においてコンパクトシティ施策が検討されている。本研究では、都市の人口規模に着目し、人口規模の異なる仮想都市を対象として数値シミュレーションを行い、コンパクトシティ施策の効果について分析することで、人口規模の違いが各施策の効果へ及ぼす影響を明らかにした。また、郊外店舗が立地した場合についても分析し、施策実施前の都市構造により施策効果に明確な差がみられることを明らかにした。
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杉本 英大, 高山 純一
2010 年 27 巻 p.
355-364
発行日: 2010年
公開日: 2017/11/29
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本研究は,構造改革特区の認定を活用して案内標識の文字高を縮小し,標識ごとに視認性及び景観性の両面からの評価を行うものである.
標識縮小後のアンケート調査(170人を対象)の結果,景観向上については51%が評価しており一定の効果があること,視認性については文字高の縮小に対して78%が特に気にならないと回答しており,不便性を感じる事は少ないことが明らかとなった.
工学的検証(各年代層を対象,1案内標識あたり84サンプル)の結果,同じ文字高に縮小しても一律の判読率を有しないことが判明した.その他,標識設置高さのほか,標識周辺の道路線形,情報量や交差点からの距離などが判読率を規定する要因になっていることなどが明らかとなった.
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石塚 裕子, 新田 保次
2010 年 27 巻 p.
365-374
発行日: 2010年
公開日: 2017/11/29
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本研究は,視覚障がい者は歴史的観光地において自立的な行動のニーズは潜在化しているという仮説を設定し,視覚機能の有無,行動範囲の広さ,過去の経験の3つの視点から観光行動の経験とニーズを分析し,ニーズを潜在化させる要因を分析することを目的とした.その結果,視覚機能の有無はニーズの表明には直接には影響しない可能性が高い結果が得られた.一方,行動範囲の広さは,移動をともなう行動か否かによって経験率にもニーズの表明率にも大きく影響を与えていることが明らかになった.さらに,過去の経験はニーズを顕在化させる傾向にあり,反対に,経験がないと移動を伴う広行動においてニーズの表明率が顕著に低下することが明らかになった.
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谷口 守, 橋本 成仁, 植田 拓磨
2010 年 27 巻 p.
375-383
発行日: 2010年
公開日: 2017/11/29
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近年、IT技術の発展は購買行動におけるサイバー空間の役割を拡大させている。そのために実空間が受ける影響は大きいと考えられるが、その実態は十分に明らかにされていない。本研究では、行動連鎖表という新たな概念を導入することにより、購買行動の種類別にサイバー化が実空間の滞留行動に及ぼす影響を定量化した。同時に分析にアンカー、フロートという概念を導入することにより、サイバー化による代替効果は補完効果より大きく、都市滞留を損なうとともにその影響は購買行動の種類によって異なることを明らかにした。
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倉根 明徳, 川上 光彦, 森國 浩一
2010 年 27 巻 p.
385-390
発行日: 2010年
公開日: 2017/11/29
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本研究では、都道府県及び政令市で策定された都市計画道路の見直しガイドラインを整理し、それらの全国的な傾向を明らかにした。また、都道府県及び政令市の担当部局を対象に実施した実態調査の分析から、見直しの特徴を明らかにし、課題についても考察した。主な特徴としては、住民との合意形成を早期から必要とする自治体が少ないことや建築制限の緩和等を行うことで地権者の理解を得ている自治体が、道府県で約1割、政令市で約4割あることなどが明らかになった。
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高倉 淳美, 野田 満, 加藤 式男, 川上 洋司
2010 年 27 巻 p.
391-398
発行日: 2010年
公開日: 2017/11/29
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本研究は、既成市街地内において長期間未整備のままに置かれている都市計画道路として越前市内の「大正線」を事例として取り上げ、当該道路の沿道状況、果たしている交通機能の現状、沿道住民の意識・意向を分析することによって、見直し(計画通りの整備、廃止・現道整備)の方向性とそのための要件を明らかにすることを目的としている。その結果として、未着手に置かれていることによる種々問題の所在、住民間の整備意向に関する対立の構造等を明らかにし、今後の整備に向けての要件を提示している。
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長尾 基哉, 中川 大, 松中 亮治, 大庭 哲治, 望月 明彦
2010 年 27 巻 p.
399-407
発行日: 2010年
公開日: 2017/11/29
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本論文では,利便性の高い公共交通を整備することにより周辺の人口が増加し,公共交通を軸としたコンパクトな都市が形成されているかどうか実証するため,全国の地方都市内の鉄道・軌道の運行頻度や人口分布の経年変化から,運行頻度の高低と,鉄道・軌道駅周辺や市街地の人口分布の現況及び経年変化との関係を分析した.その結果,全国の地方都市において,運行頻度が3本/h以上の鉄道駅及び6本/h以上の軌道駅周辺では,多くの人が居住し,なおかつ人口が増加していることを明らかにした.また,都市平均運行頻度が3本/h以上と高い都市は市街地の人口密度が上昇し,都市のコンパクト性と関係性があることを明らかにした.
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下原 祥平, 長谷部 知行, 金子 雄一郎, 島崎 敏一
2010 年 27 巻 p.
409-415
発行日: 2010年
公開日: 2017/11/29
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我が国の都市間交通ネットワークは,航空,幹線鉄道,高速道路を中心に発展してきている.このうち高速バスは,高速道路の整備とともに路線数,旅客数が着実に増加しており,地域によっては主要な公共交通サービスの一つとして定着しつつある.本論文では,高速バスを含めた各交通機関の交通サービス水準の向上が,都市間交通ネットワーク全体の利用者便益の発生にどの程度寄与しているかを分析した.さらにラインホール時間や待ち時間などの各サービスの改善が利用者便益の増加に及ぼす影響を分析した.
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大窪 和明, 奥村 誠
2010 年 27 巻 p.
417-424
発行日: 2010年
公開日: 2017/11/29
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本研究では静脈物流の特徴として使用済み製品の排出量の変動に着目し,リサイクル技術の向上や環境規制の変化が生産施設,リサイクル施設の配置にもたらす変化を分析した.その結果,使用済み製品の排出量の変動が大きい程,リサイクル技術の向上による施設配置の変化タイミングが遅れることが明らかとなった.また排出量の変動が大きい場合の回収量規制は,国内地方圏において生産の萎縮を発生させる可能性が示された.これらの結果から,リサイクル促進のためには,回収量の規制を行うよりも排出量の変動を減少させる政策を先行して行う方が,効果的であることがわかった.
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鈴木 春菜, 中井 周作, 藤井 聡
2010 年 27 巻 p.
425-430
発行日: 2010年
公開日: 2017/11/29
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都市・交通に関わる各種施策の検討・評価にあたっては,物質的環境や行動の変化に与える影響はもとより,人々の心的状態を顧慮する必要がある.まちの雰囲気や活力等計量化し難い社会的,人文的側面にも繋がりうる重要な要素であると考えられるからである.本研究では,買い物行動における楽しさに着目し,その影響要因について,国内3都市で実施した調査の分析を行い検討した.分析の結果,平日と休日の買い物の楽しさの規定因については差異が存在すること,居住地域への愛着の水準や買い物行動における交通機関の差異,当該買い物行動への同伴の有無が,買い物行動中の「楽しさ」の水準に影響を及ぼす可能性が示唆された.
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谷口 守, 橋本 成仁, 氏原 岳人, 安立 光陽
2010 年 27 巻 p.
431-436
発行日: 2010年
公開日: 2017/11/29
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近年、交通環境負荷低減の観点から、都市構造自体のコンパクト化やMM(モビリティ・マネジメント)実施の努力が積み重ねられている。しかしそれと並行し、現在のままの都市構造や自動車利用者属性であったとしても、その現状の中での自動車利用削減の可能性自体を明らかにしておくことの意義は大きい。そこで本研究では、居住者自身に自動車運転量の半減化の可能性、及びその場合の削減方法を尋ねる調査を実施した。分析の結果、現在の居住地や現在の都市構造のままでも約7割の者が自動車利用を半減できると考えていることを把握するとともに、半減化の可能性やその方法の構成は現在の居住地や交通行動の影響を受けることなどを明らかにした。
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福田 大輔
2010 年 27 巻 p.
437-448
発行日: 2010年
公開日: 2017/11/29
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本稿では,旅行時間変動の経済的価値付けに関して,特に行動モデル関連の研究を対象として研究動向のレビューを行うと共に,プロジェクト評価への実適用に向けた関連課題の包括的な整理を行った.レビューにおいては,代表的アプローチである平均-分散アプローチ,並びに,スケジューリングアプローチの特徴と実適用上の課題を整理し,旅行時間変動価値の推計事例を整理した.さらに両者を統合した新たなアプローチの実適用可能性についても概説した.次に,旅行時間変動の将来予測やSP調査における行動経済学的観点の必要性など,価値付けに関連する諸課題についても包括的な整理を行った.
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山中 英生, 亀谷 友紀, 柿原 健祐
2010 年 27 巻 p.
449-456
発行日: 2010年
公開日: 2017/11/29
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自転車の走行環境を改善する上では,自転車の走行特性にあった設計が重要となる.特に,通行路のシケイン形状が様々な場合に生じるため,曲線半径等の設計基準が定められているが,高齢者など速度特性の異なる利用者にあった基準であるかについて確認されていない.本研究では,交差点部やバス停部等に生じるシケイン形状について,現状の課題を整理した上で,若年者,高齢者の路外実験による分析を元にして,不快感の視点から適切な諸元を明らかにしている.
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