2003 年 20 巻 p. 409-418
本研究では、主に現地の観察と実測をもとに、近代の都市拡大期に誕生した吉田山北東部の数寄空間と住宅を組み合わせた領域の地形操作による空間構成と景観演出上の工夫を明らかにした。数寄空間である茂庵庭園では、丘陵地の傾斜をそのまま活かして広く沿路を張り巡らし、重要な視点場となる建築周辺の地形のみを立体的に造形し効果的に演出された。東下に隣接する谷川住宅群では、傾斜を段地にして住居を配置し、石垣と建築に挟まれ閉じた通路空間と、積極的に眺望を捉える石段で構成された。両者の改変した地形の上で建築と庭、通路の位置関係により景観が決定され、山居と住居のデザインに連続性を作り、自然から都市へ至る秩序が形成された。