抄録
本研究は, 次善経済 (財の価格と限界費用が乖離して均衡している経済) 下において複数均衡が存在する場合における交通施設整備の便益計測方法を, 核-周辺モデル (Krugman, 1991) を用いて検討している. その結果, 交通施設整備によって均衡が変化しない場合, 従来型の便益評価手法で直接効果を計測可能である一方, 交通施設整備によって均衡が他の均衡に不連続に変化する場合, 従来型の便益評価手法は適用不可能であることを示している. また, 均衡が変化する場合における便益評価手法として, 実務的に有用な, 仮想, 交通需要関数の消費者余剰を計測する方法を提案している. そして, 一般に複数均衡が存在する下でのプロジェクトの便益評価の展望について考察している.