抄録
本研究では, 公共事業に対する人々の賛否意識に影響する心理要因を明らかにすることを目的とする. この目的の下, 既往研究を踏まえて, 全国の都道府県の世帯を対象とした調査データ (N=15316) を用いて, 人々の賛否意識とその規定因との因果関係について実証的に検討した. その結果, 公共事業の賛否意識を規定する重要な影響要因として,「認知世論」,「他者の意見」,「公共事業の論点認知」,「マスコミ賛否」が存在することが確認され, 既往研究で示された心理的因果構造が全国的な規模で成立している可能性が示唆された. それに加えて, 本研究で新たに検討した要因である「公共事業関係者の誠実性の信頼」が, その心理的因果構造の重要な構成要素になり得ることが示唆された.