日本世代間交流学会誌
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Print ISSN : 2185-7946
学童疎開を引率教員が遺した記録から考察する
‐「語り継ぐことが難しい体験」(Intergenerational Buffers)に関する世代間交流‐
佐々木 剛草野 篤子
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2023 年 12 巻 2 号 p. 3-12

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抄録
1994(昭和19年)に、国策で行われた国民学校の学童疎開を引率した教員が保存していた記録が遺っていた(かけはし72号、2011)。本研究は、この記録をもとに学童疎開がもたらした戦争被害者となる学童と、その引率者の疎開生活を明らかにすることと、学童疎開には、体験者自身が子や孫世代に語りにくい世代間緩衝(Intergenerational Buffers)という側縁が存在することを明らかにすることを目的とする。方法としては、今回、新たに見つかった1944(昭和19)年から1945(昭和20)年にかけて記録された学童疎開に関する学園日誌の内容分析を行い、当時の学童即愛での生活の様子を時系列に整理し分析した。  その結果、学童疎開での生活の困難さは、学童のみなら引率したオトンあの側にも相当のつらい経験であったことが明らかになった。また、この学童疎開の生活体験を継承するのには、「語り継ぐことが難しい」側面を如何に乗り越えるかということが、高齢者からの語りを聞き取る上で重要であり、かつ、そこには世代間緩衝(Intergenerational Buffers)という概念を検討する必要があることが新たに分かった。
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© 2023 日本世代間交流学会
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