日本世代間交流学会誌
Online ISSN : 2758-5905
Print ISSN : 2185-7946
12 巻, 2 号
日本世代間交流学会誌
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 濱田 光佑, 臼井 晴信, 寺村 晃
    2023 年12 巻2 号 p. 13-21
    発行日: 2023/03/20
    公開日: 2023/05/12
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、愛知県清須市で実施されている官学連携の介護予防事業「清須市民げんき大学」の卒業生への半構造化インタビューを通じて、事業への参加による高齢者への効果および事業内で実施されている短期大学生との世代間交流の効果を明らかにすることを目的とした。対象は2020-2021年度の卒業生である65歳以上の高齢者19名であった。得られたデータを質的帰納的に分析した結果、げんき大学への参加による変化としては【健康への意識・行動変容】、【地域社会への信頼】、【社会参加の機会の増加】の3つのカテゴリーと、世代間交流が与える効果として【活力の向上】、【他世代への理解】、【他世代との繋がり】の3つのカテゴリーが抽出された。本研究の結果、介護予防事業を向上させ健康行動の後押しとなっていた。また、間接的には高齢者の地域社会への信頼感、地域貢献意識を向上させ社会参加の機会を増やす可能性が示唆された。
  • ‐「語り継ぐことが難しい体験」(Intergenerational Buffers)に関する世代間交流‐
    佐々木 剛, 草野 篤子
    2023 年12 巻2 号 p. 3-12
    発行日: 2023/03/20
    公開日: 2023/05/12
    ジャーナル オープンアクセス
    1994(昭和19年)に、国策で行われた国民学校の学童疎開を引率した教員が保存していた記録が遺っていた(かけはし72号、2011)。本研究は、この記録をもとに学童疎開がもたらした戦争被害者となる学童と、その引率者の疎開生活を明らかにすることと、学童疎開には、体験者自身が子や孫世代に語りにくい世代間緩衝(Intergenerational Buffers)という側縁が存在することを明らかにすることを目的とする。方法としては、今回、新たに見つかった1944(昭和19)年から1945(昭和20)年にかけて記録された学童疎開に関する学園日誌の内容分析を行い、当時の学童即愛での生活の様子を時系列に整理し分析した。  その結果、学童疎開での生活の困難さは、学童のみなら引率したオトンあの側にも相当のつらい経験であったことが明らかになった。また、この学童疎開の生活体験を継承するのには、「語り継ぐことが難しい」側面を如何に乗り越えるかということが、高齢者からの語りを聞き取る上で重要であり、かつ、そこには世代間緩衝(Intergenerational Buffers)という概念を検討する必要があることが新たに分かった。
  • ‐新型コロナウイルス感染拡大前後における役割の変化‐
    西井 穂, 内田 勇人
    2023 年12 巻2 号 p. 23-31
    発行日: 2023/03/20
    公開日: 2023/05/12
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、地域包括ケアシステムの地域づくりを支える地域交流レストランにおいて、地域住民の社会参加や世代間交流の実態を把握すると共に、新型コロナウイルス感染拡大が、地域交流レストランに与えた影響と役割の変化を明らかにし、今後の課題を整理することを目的とした。方法は、地域交流レストランの職員4名を対象に、フォーカス・グループ・ディスカッションを実施し、質的データ分析手法を用いた分析とした。職員は、運営形式を変えつつ交流する場を支援する一方、感染拡大による経営状況の悪化から、経営継続と社会貢献の間で葛藤を抱えていることが明らかになった。また、利用者は感染症への不安を抱きつつも、他社との結びつき、居場所と交流を希求し、地域交流レストランは、感染拡大の中で世代間の交流を促す場所として新たな役割が増していた。地域住民の居場所を維持するためにも、今後は地域交流レストランの価値の評価や成果の可視化が望まれる。
  • 藤本 優子, 小西 かおる
    2023 年12 巻2 号 p. 33-42
    発行日: 2023/03/20
    公開日: 2023/05/12
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は、母親が受ける祖母からのサポートの類型とそれらの類型に関する要因を明らかにすることである。都市部に居住する4歳未満の乳幼児を養育する母親を対象に、母親が祖母から受けている育児サポートについて「親への手段的サポート」と「親への情緒的サポート」の2つの枠組みをもとに項目を作成し、自記式質問紙調査を実施した。祖母から受けているサポートとして、「親への手段的サポート中心群」「親への情緒的サポート中心群」「受授少なめ群」の3つの類型が析出された。これらの類型を関連のある要因は、母親の年齢、最末子の年齢、祖母の健康状態、子の人数、母の就労状況、祖母との続柄、祖母との居住関係の7項目だった。本研究で得られた知見は、類型をその特徴を活かした保険事業を展開する上での、また、各類型における課題と必要な施策、充足すべき資源を検討する上での基礎的資料となる。
  • ‐学習方略の使用・獲得を視点として‐
    二橋 拓哉, 山崎 瑠利子, 坂詰 悦子, 結城 遥
    2023 年12 巻2 号 p. 43-53
    発行日: 2023/03/20
    公開日: 2023/05/12
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では主体的・対話的で深い学びの実現に向けて中学校家庭科の高齢者学習の実践を行った。また、高齢者学習の意義と効果について学習方略を視点に検討した。得られた知見は以下の2点である。 (1)実践の結果、生徒の「関連付け」「論理性」「批判的判断」の得点は有意に向上した。 (2)実践の結果、「高齢者方略」の得点は有意に上昇した。 また、その要因は、授業の中で高齢者と協力・協働する活動を取り入れたからである。このことから、学習方略獲得の観点から授業で高齢者と協力・協働する場面を取り入れる意義と効果が明らかになった。以上の結果から、実践した授業は学習方略の獲得に寄与しており、「主体的・対話的で深い学び」を実現する上で意義があることが分かった。
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