抄録
レアメタルの一種であるタンタル (Ta) は、主にコンデンサなどに用いられる重要な金属である一方で、生産地の偏在や紛争鉱物としての側面など、多くの課題がある。リサイクルによる供給の安定化が必要とされる一方、一般的な湿式法や乾式法では操業時の環境負荷やコストに課題が残る。上記の検討に基づき、著者らはこれまでに研究してきた「固体王水」のタンタルへの適用を検討した。固体王水は、塩化鉄 (III) (FeCl3) と塩化カリウム (KCl) からなる複合溶融塩であり、これまでに白金族金属 (PGMs) やレアアース (REEs) のリサイクルへの適用が確認されている。本研究では、この固体王水を用いてタンタルを塩化し、その後の加水分解で酸化タンタルを回収する手法を開発した。その結果、乾式法としては比較的低温である630-670 K でタンタルの塩化を達成した。また塩化したタンタルは水や硝酸によるリーチングで、不純物として酸化鉄が混入した酸化物としての回収を確認した。回収率は最大で77.5%となり、ロスは塩化時の揮発によるものと推定された。以上の結果から、固体王水の適用によりタンタルを効率よくリサイクルできることが示唆された。