近年、伴侶動物におけるアレルギー性疾患や慢性炎症性疾患は増加しており、非侵襲的かつ客観性の高い診断指標、さらに食餌やサプリメントを含む新たな治療選択肢の確立が急務となっている。本稿では、不飽和脂肪酸由来の生理活性脂質(エイコサノイドなど)を基盤とし、リピドミクスによる体液バイオマーカー探索、特に尿中プロスタグランジンD2代謝物(PGDM)を中心とした診断応用の可能性を紹介する。加えて、新規抗炎症脂質5,6-DiHETEの発見とその作用機序(TRPVチャネル抑制)、犬アトピー性皮膚炎・腸炎モデルでの有効性、さらには青背魚由来5,6-DiHETEを活用したサプリメント製造の取り組みを概観し、「診て・食べて・治す」いう統合的ビジョンを提示した。