腸管内の亜硝酸の存在は発癌を誘引する可能性があるので,イヌ・ネコの腸内細菌による亜硝酸の生成と代謝について糞中混合微生物を用いて検討し,次の結果を得た。1)通常,イヌ・ネコには硝酸・亜硝酸還元能を持つ腸内細菌が存在する。2)イヌ・ネコの加齢と共に硝酸還元速度に対する亜硝酸還元速度の比が減少したので,高齢のイヌ・ネコでは亜硝酸が蓄積し易くなると考えられる。3)腸内細菌における亜硝酸還元酵素の合成は,亜硝酸によって促進される。4)pH6.0-7.2では,亜硝酸還元速度よりも硝酸還元速度の方が大きく,亜硝酸が蓄積し易いと考えられる。pH6.0以下では硝酸還元能が低かったので,亜硝酸の蓄積を防ぐためには,大腸内のpHを6程度に保つことが望ましい。5)硝酸還元速度に対する亜硝酸還元速度の比がギ酸の添加により高められたことから,亜硝酸の蓄積を防ぐためには,ギ酸の生成を増加させることも重要である。