抄録
イヌの腸管内にどのような酪酸生成菌が生息するかを知る目的で,イヌの糞便から酪酸生成菌を単離した,酪酸生成菌の数および酪酸生成能の高い菌の数はイヌの加齢と共に減少したので,高齢のイヌでは酪酸生成量が減少すると考えられた。酪酸生成菌の中で最も菌数が多かったのはEubacterium属の菌であり,特にEubacterium rectaleと推定された菌は酪酸生成能が高かった。しかし,この属の菌数はイヌの加齢と共に減少した。また,Butyrivibrio属および Fusobacterium属の菌の数も加齢と共に減少した。一方,Clostridium属の菌は加齢の影響を受けず,従ってこの属の菌が高齢のイヌにおける主要な酪酸生成菌であろうと考えられた。Clostridiumは悪玉菌と考えられているので,特に高齢のイヌでは,Eubacterium属や Butyrivibrio属などの菌数を増加させることによりClostridiumを抑制しながら酪酸生成を増加させることが望ましい。