くすりと糖尿病
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原著論文
ビルダグリプチンによる肝障害の危険因子の解明に向けたパイロット研究
朝倉 充俊毛利 順一稲野 寛金子 真之藤原 亮一成川 衛伊藤 智夫厚田 幸一郎
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ジャーナル 認証あり

2017 年 6 巻 1 号 p. 72-80

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抄録

DPP-4阻害薬のビルダグリプチンは,国内外において肝障害を引き起こす危険性が報告されているが,その危険因子は明らかとなっていない.筆者らは基礎研究の結果から,肝臓において炎症反応を惹起する薬剤を併用することがビルダグリプチンによる肝障害の危険因子となる可能性を見出した.本研究ではその仮説の妥当性を検証するために,ビルダグリプチン服用患者を対象とした後ろ向き観察研究を行った.対象患者146名中31名(21%)において,ビルダグリプチン服用開始後1年以内に肝障害が認められた.肝障害の重症度を分類したところ,多くの患者は軽症であったが,中等症や重症に分類される患者も存在し,重症であった患者はビルダグリプチン服用開始後にアセトアミノフェンを併用していた.さらに肝障害を発症した症例では,ビルダグリプチン服用開始後におけるアセトアミノフェンの併用率が高い傾向(P=0.06)が認められた.以上より,肝障害を引き起こす代表的な薬剤であるアセトアミノフェンの併用は,ビルダグリプチンによる肝障害の危険因子となる可能性が示唆された.

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© 2017 一般社団法人日本くすりと糖尿病学会
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