くすりと糖尿病
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原著論文
  • 製剤学的視点から
    武田(森下) 真莉子, 森下 理咲子, 池田 実樹, 保野 雄真, 廣底 万由子, 豊永 美和, 松平 正輝, 飯田 翔輝, 村瀬 諒祐, ...
    2025 年14 巻2 号 p. 118-130
    発行日: 2025/12/20
    公開日: 2026/02/06
    ジャーナル 認証あり

    Glucagon-like peptide-1受容体作動薬であるセマグルチドは,胃から吸収されるよう設計されているため,胃内環境や投与方法などの要因が,錠剤の崩壊および有効成分の溶解に大きな影響を及ぼす.本研究では,セマグルチド(Rybelsus®錠)の血漿中濃度における個人間および個人内変動に寄与する製剤学的要因を明らかにするため,実臨床で想定されるさまざまな投与条件下における錠剤の製剤特性を調査した.さらに,投与後の胃内の水分量の経時的変化や制酸剤による胃内pH変化の影響を評価するため,ラットを用いたin vivo実験を実施した.その結果,Rybelsus®錠は水の量に関係なく,水道水中で約1時間以内に完全に崩壊することが明らかとなった.しかし,嚥下補助剤の使用や,酸性溶液中では,錠剤の崩壊およびサルカプロゼートナトリウム(SNAC)の溶解は大幅に遅延した.さらに,水道水は急速に胃から吸収/排出されたため,少量の飲水量では錠剤が十分に崩壊しない可能性が示唆された.また,SNAC の胃溶解性を高めるために制酸剤を併用すると,セマグルチドの経口吸収がラットにおいて有意に増加したことから,制酸剤とセマグルチドの間に薬物相互作用が起こり得る可能性が示唆された.本研究の結果は,実臨床においてセマグルチドの血中濃度変動に影響を及ぼすと考えられる生理学的要因や製剤学的要因の一部を明らかにした.本研究は,リベルサス®錠の適切な投与ガイドラインの遵守の重要性を製剤学的見地から示す初めての報告である.

  • 藤井 博之, 田中 咲妃, 鹿目 小百合, 畠中 友理子, 澤田 由実, 島野 玲菜, 竹石 志保, 小田 泰弘, 柏村 友一郎, 小倉 真 ...
    2025 年14 巻2 号 p. 131-138
    発行日: 2025/12/20
    公開日: 2026/02/06
    ジャーナル 認証あり

    近年,糖尿病を有する人のスティグマが注目されている.その理解を深め,克服に向けた一助となる可能性があると考え,医中誌をデータベースとして医学関連分野の文献情報における発信状況を俯瞰することとした.併存疾患を抱える患者もいることから,キーワードとして「スティグマ」・「糖尿病」が取り上げられた文献情報の動向調査に加え,糖尿病以外の主な疾患についても検索対象とした.2000年以降で「スティグマ」・「糖尿病」の2語が用いられたものは200件あり,「スティグマ」のみで抽出された件数の約15%を占めた.また,対象とした2000年以降の25年間のうち,糖尿病では直近5年間で抽出されたものが9割以上であったことから,急速に注目されていることが確認できた.また,他の疾患においてもスティグマに関連した文献情報の動向の一端を把握することができた.患者中心の医療の提供に際して医療従事者は,各種疾患(状態)におけるスティグマの理解を深めるとともに,アドボカシー活動への理解を広げることに努め,ひとりひとりが小さな取り組みを積み重ねていくことも必要と考えるが,本調査結果はその一助として意義のあるものと考えている.

  • 郡司 清志, 羽村 光, 鶴川 千佐子, 田上 順隆, 福山 陽子, 中村 泰朗, 橋口 知香, 浅野 陽香, 大浦 華代子, 下川 友香理
    2025 年14 巻2 号 p. 139-152
    発行日: 2025/12/20
    公開日: 2026/02/06
    ジャーナル 認証あり

    インスリンの同一部位への反復皮下注射により皮下硬結が形成される.皮下硬結部位への注射はインスリン吸収を低下させ,血糖変動を引き起こす.皮下硬結の予防には,適切な範囲で注射部位を変更する皮下注射方法(サイトローテーション)が有効である.保険薬局で注射手技を確認した135名の患者のうち63%がサイトローテーションを実施しておらず,25%に皮下硬結の訴えがみられた.サイトローテーション未実施で注射回数が多く,注射製剤の使用歴が長い患者に皮下硬結の訴えが多い傾向が示された.患者はサイトローテーションの知識を有しているものの,注射しやすい部位や穿刺時の痛みが少ない部位を選んで注射する傾向がみられた.薬局薬剤師の半数近くが注射部位の適切な範囲を把握しておらず,薬局薬剤師の指導不足がサイトローテーション未実施の一因と考えられた.薬局薬剤師が腹部の注射範囲を可視化したサイトローテーションの指導資材を用いて定期的に患者に指導した結果,サイトローテーションの実施率は半年後に66%,1年後に91%に上昇した.視覚的資材を用いた定期的な指導は患者のサイトローテーション実施の維持に有効であると期待される.

  • 〜各種基礎性能試験等による評価〜
    朝倉 俊成
    2025 年14 巻2 号 p. 153-159
    発行日: 2025/12/20
    公開日: 2026/02/06
    ジャーナル 認証あり

    自己注射用製剤としてのマンジャロ®皮下注2.5 mgアテオス®(日本イーライリリー-田辺三菱:MJ-AT)の物理特性を,同じ29G針を用いる他製品と比較検討し,使用感や操作性の観点から評価した.試料と方法は,MJ-ATに組み込まれた注射針,および比較対象としてインスリン用シリンジ マイジェクターTM(テルモ:TM-M),BDロードーズTM(日本ベクトンディッキンソン:BD-L)の各29G針を用い,①針の刃先・基部形状観察,②MJ-ATの注入ボタン押込み負荷,③注射稼働時間,④注射針の強度(変形量),⑤刺通抵抗の5項目を評価した.結果は,MJ-ATの注入ボタン押込み負荷は,機械的補助により一定であったが,意識して注入終了まで押し続ける必要があった.強度は,MJ-AT=TM-M>BD-L(p<0.005)でMJ-ATの強度が確認された.一方,シリコンへの最大刺通抵抗値はTM-M<BD-L<MJ-AT(各p<0.005)であった.MJ-ATの刺針速度は,4,176 mm/secと高速度であった.刺通抵抗は他に比べて大きかったものの,MJ-ATは高速での刺針速度と患者が注射針を見ることなしに自動的に稼働するという機能を有した注入デバイスを使用していることから,患者が感ずる刺針への負担は大きくはないものと推定される.また,注入に関わる操作負担の軽減という点でも使用者に優しい設計が施されており,特に高齢者や注射に不慣れな患者においても注射針が破断しにくいなどの安全面,適正な刺針深度を確保した自己投与が容易な製剤であると考えられる.

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