狭母音化二重母音,FLEECE母音,及び GOOSE母音の音素表記は,国際的には統一見解がない。二重母音のわたりを示すためにその第2要素に母音記号を用いるか,子音記号を用いるかで見解が二分している。また,FLEECE母音と GOOSE母音の音素を単一母音とみなすか,二重母音とみなすかについても意見が分かれている。本稿は音声学理論に基づいて,代表的な研究の意義と変遷を考察することが目的である。最新のLindsey (2019) が理論的には画期的な解釈であり,音声学的にも音韻論的にも最も説得力があると主張するが,英語教育への応用ということを考えると,正確な理論よりも妥協的なJones et al. (2011) や Wells (2008) の発音辞典の音素表記の継続が望ましいとみなせる。