実践英語音声学
Online ISSN : 2435-5003
最新号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
研究論文
  • 創始者Daniel Jonesとその学問的系譜
    長瀬 慶來
    2024 年 5 巻 p. 1-20
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/04/02
    ジャーナル フリー
    本論文の目的は,Donald Stokes『Pasteurの4象限』(Pasteur’s Quadrant (1997)) の理論的枠組みを用いて,ロンドン学派の音声学研究の学問的系譜とその先進性を分析することである。分析手法として,Stokes (1997) に従い,二つの弁別素性 [±基礎原理の追求] [±実用・実践を目的] を用いて,ロンドン学派の音声学研究者を第Ⅰ象限から第Ⅳ象限まで(第Ⅲ象限は該当する研究がありそうにないため) 3つの象限に分類した。それにより,ロンドン学派の音声学研究者の中から,第Ⅰ象限(実用志向型基礎研究=Pasteurの象限)にDaniel Jonesを位置づけ,第Ⅱ象限(純粋基礎研究=Bohrの象限)にPeter Ladefogedを位置づけ,第Ⅳ象限(純粋応用研究=Edisonの象限)にHarold Palmerを位置づけた。最後に,Daniel Jonesの上記3領域へのバランスの取れた設備の充実と人材の確保により,ロンドン学派の音声学研究が,他に例を見ない,理論・実践・英語教育への応用という,研究への統合的アプローチを行ってきたことが判明した。斯して,ロンドン学派の音声学研究が,これまで100年以上音声学研究の最先端の研究機関として音声学の中心であり続けた理由を明らかにすることができた。
  • 日本人学習者と英語母語話者の比較
    佐々木 彩子
    2024 年 5 巻 p. 21-37
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/04/02
    ジャーナル フリー
    英語音声の聞き取りは音楽的能力に関係があるだろうか。英語母語話者41人の英語音声の高低を聞き取る力と音楽的能力(音高識別能力)の相関係数は0.08,長さの聞き取りと音高識別能力の相関係数は-0.17で,ともに相関関係はみられなかった (佐々木,2023)。本研究は,日本人学習者も同様に相関関係がないかを調べた。日本人英語学習者77人の英語音声の高低を聞き取る力と音高識別能力は,有意水準0.05としてゆるやかな相関があり(相関係数0.37),長さの聞き取りと音高識別能力にもかなり相関があった(相関係数0.45)。日本人学習者の場合は,音楽的な音の高低を聞き取る力の高い人ほど,英語音声の高低と長さの違いを聞き分けられる傾向がみられた。
実践論文
  • 児童に対する有用性と楽しさのアンケート結果より
    阿部 聡生
    2024 年 5 巻 p. 39-57
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/04/02
    ジャーナル フリー
    本報告は,小学生児童を対象にしたフォニックスを用いた発音指導の効果と児童の印象をアンケートと自由記述を用いて調査したものである。その結果,生徒がフォニックスを用いた発音の練習を楽しみ,価値があると感じていることが明らかになった。さらに,自由回答を通じて,児童は日本語と英語の音の比較を行い,調音方法を言語化し,フォニックスの知識を読むことや話すことなど英語の他の領域の学習にも応用していることが分かった。これにより,適切な発音指導が生徒の全体的な英語学習を向上させる可能性があることを示唆される。しかし,実践においては年齢に適した指導や,同学年でも個々の発達の違いを認識することの重要性,および教師の英語発音に対する習熟度と認識の重要な役割についての検討事項があり,小学校教員に効果的な発音指導を提供するためのトレーニングも重要であると考えられた。
研究ノート
  • 13 or 30?
    佐々木 彩子
    2024 年 5 巻 p. 59-68
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/04/02
    ジャーナル フリー
    “teen numbers”と“ty numbers”に名詞が後続する発話において,オーストラリア英語母語話者がどれくらいの頻度で数字の第1音節に強勢を置いているかを音響的に調べるために,オーストラリア英語母語話者30人による280の発話の数字の第1音節と“teen”, 第1音節と“ty”それぞれの基本周波数と強さを分析した。“teen numbers”は,“teen”が高く (39%) 強く (27%) 発話されるより,第1音節を高めに (57%) 強めに (52%) 発話されていた。“ty numbers”も,“ty”が高く (32%) 強く (19%) 発話されることもあったが,第1音節が高く (67%) 強く (73%) 発話される頻度が高かった。
  • 三浦 弘
    2024 年 5 巻 p. 69-82
    発行日: 2024/03/31
    公開日: 2024/04/02
    ジャーナル フリー
    狭母音化二重母音,FLEECE母音,及び GOOSE母音の音素表記は,国際的には統一見解がない。二重母音のわたりを示すためにその第2要素に母音記号を用いるか,子音記号を用いるかで見解が二分している。また,FLEECE母音と GOOSE母音の音素を単一母音とみなすか,二重母音とみなすかについても意見が分かれている。本稿は音声学理論に基づいて,代表的な研究の意義と変遷を考察することが目的である。最新のLindsey (2019) が理論的には画期的な解釈であり,音声学的にも音韻論的にも最も説得力があると主張するが,英語教育への応用ということを考えると,正確な理論よりも妥協的なJones et al. (2011) や Wells (2008) の発音辞典の音素表記の継続が望ましいとみなせる。
巻末資料
feedback
Top