2020 年 17 巻 p. 86-92
本研究は、大学新入生を対象に、運動不足感の有無と体力および運動習慣の関連を明らかにし、検討することを目的とした。大学新入生男女299人(男子154人、女子145人)を対象に、体力測定(身長、体重、立位体前屈、握力、垂直跳び、上体起こし、最大酸素摂取量)とアンケート調査(運動不足感の有無、運動習慣)を行った。その結果、運動不足感を感じている割合は、男子で74.0%、女子で87.6%であった。また、運動習慣ありの割合は男子で61.0%、女子で33.1%であった。運動不足感の有無による体力比較において、男女とも測定した5項目はすべてで運動不足感なし群の平均値が運動不足感あり群より高値を示した。特に男子の上体起こしと女子の立位体前屈、握力、上体起こしでは、2群間においてそれぞれ有意差が認められた。これらの結果により、男女とも運動不足感なし群の方がより高い体力を示し、同時に運動習慣ありの割合も高かったことが分かった。そのため、運動不足感と体力の関係を検討する際、運動習慣の影響を考慮する必要がある。ロジスティック分析の結果、運動不足感に関連する要因として、男子の運動習慣、体重、女子の運動習慣、上体起こしがそれぞれ抽出された。以上の結果から、運動不足感を検討する際には、運動習慣だけでなく、体格や体力も考慮する必要があると考えられる。また、運動不足感あり群において、運動習慣ありの人数割合が男子53.5%、女子26.0% であり、女子の方が男子より有意に低いという結果から、同じ運動不足感あり群であっても男子と女子は、日常での運動実施の実態が、かなり異なっていることが推察される。これにより、大学生新入生、とりわけ女子学生が運動不足と感じながら、運動の実践に至っていない実態が明らかになった。