大学体育スポーツ学研究
Online ISSN : 2434-7957
研究ノート
新型コロナウイルス感染症拡大下における大学生のメンタルヘルスと社会的スキルに関する調査研究:
対面授業による体育実技の履修有無の比較から
寺岡 英晋 村山 光義佐々木 玲子稲見 崇孝東原 綾子野口 和行加藤 幸司永田 直也福士 徳文
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ジャーナル オープンアクセス

2022 年 19 巻 p. 84-93

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抄録

大学体育実技授業は,対面授業による実施を前提に心身の健康の維持・改善に寄与してきた.しかし,新型コロナウイルス感染症パンデミックの影響により,2020年度春学期(前期)に多くの大学で対面授業による体育実技が実施不可となり,その授業形態を遠隔授業に変更し,大学によっては休講を決定した.このような極めて特殊な状況下において,特に大学生のメンタルヘルスや社会的スキルへの否定的な影響が懸念されていた中,筆者らの所属する大学(以下本学)では,2020年度秋学期(後期)に体育実技を対面授業で再開するのに際し,これらの要素に対する体育実技の肯定的な教育的効果が期待された.そこで,本研究では,対面授業による体育実技の履修が大学生のメンタルヘルスの向上および社会的スキルの育成に与える影響を検証することを目的とした.対象者は本学の学生455名(男性230名,女性225名)であった.体育実技授業を履修した者は316名(履修者群),履修していなかった者は139名(非履修者群)であった.調査は2020年度秋学期授業期間の前後でWeb アンケートによって実施した.Web アンケートは対象者の属性,精神的健康状態表(WHO-5),社会的スキル尺度(KiSS-18)から構成した.結果は以下の通りである.(1)二要因分散分析の結果,WHO-5とKiSS-18において履修要因と時間要因で有意な交互作用が認められた.また,WHO-5は履修者群で向上,KiSS-18では非履修者群で低下の傾向が示された.(2)課外活動への所属有無を踏まえた検討では,KiSS-18の得点について有意な交互作用が認められた.特に,課外活動に所属している非履修者群において,受講後の得点が受講前のKiSS-18の得点に比べて有意に低かった.(3)履修種目を踏まえた検討では,WHO-5とKiSS-18において有意な交互作用が認められなかった.結論として,体育実技の履修が授業期間前後においてメンタルヘルスの向上,および社会的スキルの維持に寄与したことが示された.とりわけ,その維持・促進要因として課外活動への所属有無や履修種目の違いは関連が小さく,体育実技への参加が最も影響を与えている要因のひとつである可能性が示された.

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