2024 年 21 巻 p. 1-12
「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」(中央教育審議会,2018)が答申され,大学に変革が求められる中,大学体育の進むべき方向性について検討を行った.現状の大学体育は「身体」と「スポーツ」を扱いながら,「人間形成」「健康教育」「スポーツ文化の理解と実践」を目的に展開されていると分析された.人間形成おいては,人格形成と社会に求められる人材の育成への役割を強く意識し,アクティブ・ラーニングの実践を進める必要性があり,社会人基礎力やライフスキルなどの汎用的能力の育成に関する教育プログラムの開発を重要な研究課題とし,大学のポリシーの達成に結び付ける必要がある.健康教育としては,生涯にわたるwell-beingに繋がる科学的アプローチを深める必要がある.スポーツ文化の理解と実践のため,体育とスポーツの概念的区別や役割の違いを明確にし,共生社会における真の生涯スポーツに通ずる大学体育を構築する必要がある.さらに,「教学マネジメントの推進」,「STEAM教育に体育・スポーツ教育を加えた総合的な教育の構築」が今後の重視すべき視点と考えられる.そのため,「初等中等教育での教育手法」にも学び,大学体育がこれに連動して教育改革に貢献する必要ある.また,科学技術の進歩や社会のDX化,SDGs社会の進行に伴う,「体育・スポーツの価値の多様化や変容」を予測し,「サイバー空間とフィジカル空間の融合」や「人間中心の社会」の構築に柔軟に対応することも新たな課題である.そして,これらの課題を研究し,教育を実践する,大学体育の専門家を育成するシステムを構築しなくてはならない.