Journal of Pesticide Science
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緑葉揮発性成分で処理したArabidopsis thalinaのトランスクリプトーム解析:自己生成型ダメージ関連分子パターンとしての緑葉揮発性成分の役割
山内 靖雄 松田 彩松浦 凪沙水谷 正治杉本 幸裕
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電子付録

2018 年 43 巻 3 号 p. 207-213

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抄録

C6アルデヒド,アルコール,およびそれらのエステルを含む緑葉揮発性成分(GLV)は,損傷した植物によって放出されるため,ストレス応答に関与していると考えられている.しかし,遺伝子発現に対するGLVの効果は明らかにされていない.本研究では,包括的なマイクロアレイ遺伝子発現解析法を用いて,主要なGLVである,(Z)-3-ヘキセナール,(Z)-3-ヘキセノール,(E)-2-ヘキセナール,および(Z)-3-ヘキセニルアセテートに対するアラビドプシスの初期転写応答を分析した.すべてのGLVは遺伝子発現の変化を引き起こし,(Z)-3-ヘキセナール,(Z)−3-ヘキセノールおよび(Z)-3-ヘキセニルアセテートは一般的な防御関連遺伝子の発現を引き起こしたが,(E)-2-ヘキセナールは,熱や酸化ストレスなどの非生物的ストレス応答に関わる遺伝子を誘導した.これらの結果は,GLVが防御反応関連遺伝子の迅速な発現を制御する気相の情報分子として機能し,損傷した葉における自己生成型ダメージ関連分子パターン(DAMP)として生理学的役割を果たす可能性があることを示唆している.

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© 2018 日本農薬学会
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