抄録
分析部位が残留農薬測定に与える影響を,2圃場で5農薬を茎葉散布して栽培した未成熟トウモロコシ試料を用いて調査した.試料は,子実,芯,ヒゲと外皮の4部位に分離し,それぞれ分析した.残留農薬は主にヒゲ及び外皮に分布し(91%以上),他方,子実及び芯での分布割合は低かった.ヒゲ及び外皮での残留農薬の分布は,両圃場試料間で大きく相異していた.子実での実測濃度と,子実に芯を加えて試算した残留濃度間にほとんど差は認められなかったが,それらにヒゲを含めて試算した残留濃度は,明らかに高くなる場合が確認された(最大62倍以上).この結果は,トウモロコシ可食部での農薬の残留性評価において,子実に芯を合わせて分析することの影響は小さいが,ヒゲを含めるか否かの取り扱いは大きく影響する可能性を示唆した.